内容説明
王都の貧民街で暮らす少年ノアは、ある日、奇妙な依頼をうける。
<修道院から、ある本を持ちだしてほしい。>
依頼主の黒ずくめの男爵は、本と引きかえに、ノアが姉と慕う少女の行方を教える、という。
怪しみながらも、情報ほしさに依頼を受けたノアは、首尾よく修道院に忍びこむ。しかし、盗もうとしたその本は、選ばれし者だけが読むことのできる魔導書<サロモンの書>だった。
やがてノアは、囚われの王女や、人語を話すネズミと出会い、依頼主である謎の男爵の正体にせまっていく。
1冊の本をめぐり紡がれる長編ファンタジー。
「あなたも、いっしょにいらしてください。」
「おれも?」
トマスは、ノアの青い瞳を見つめた。
「あなたこそ、〈青の読み手〉にちがいない。
わたしたちは、ずっとあなたをお待ちしていたのです。」
(本文より)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ままこ
82
ハラハラワクワク。挿絵も含めてまるで海外の良質なファンタジーを読んでるよう。下町ネズミといわれる少年ノア。一冊の不思議な書物が彼の運命を変える。言い間違いもご愛嬌な相棒のパルとのコンビも面白い。続編も既に出てるようなので読みたい。2022/07/04
ゆのん
66
【児童書】主人公の少年は生きていく為に何でも屋で稼いだり、時には悪事にも手を染める生活をしている。修道院からある一冊の本を盗んで欲しいとの依頼を受けるが…。白魔術に黒魔術、ネズミの友達などが登場し魔法と冒険のファンタジー。人間の少年とネズミの友情が可愛らしく、主人公よりもネズミに注目してしまう。とても楽しく読んだが、シリーズになりそうな結末で早く先の物語を読みたくなる。2021/01/26
りらこ
27
主人公ノアの本来持っていたと思われる、芯の通った正義感が読み進めると共に成長していく様が心地よい。 登場人物達の性格も、表面に出るものばかりではない部分もきちんと描かれているからファンタジーなのに現実味もある上に決して綺麗事ばかりではないところがまた面白い。 映画になっても耐えうる背景と設定だし、最後にノアの謎がまだ残されているところから、次への期待にもつながる。 旧約聖書や新約聖書の世界も垣間見えるところや、黒白魔術も自在に登場するあたり今後の展開が楽しみ。2021/02/26
杏子
21
表紙の印象からもっと難しいかと思ったが、これは紹介次第で小学校高学年以上にも手にとってもらえるかも。少なくとも私は面白かった。内容に関しては、言い回しなどが少し難しいかもしれないが、ストーリー自体はわかりやすくおすすめできる。古くからある、いろいろな昔話やファンタジー等の要素が散りばめられている感じ。主人公の明るさに救われる。続編も出ているようなので、今後も蔵書に入れていきたい。2022/08/11
パット長月
13
ファンタジーは久しぶりで、著者は初読みだが非常に面白く読めた。立ち上がりが重かったのは、シリーズ化を想定して、入念に舞台づくりを行った結果であろう。それにしても、良くできたファンタジーであり、親子でも大人とするような会話をする(らしい)時代とはいえ、男女関係について小学生にはどうか?と自分には感じられるような記述があり、著者はどれくらいの年代を主な読者に考えているのだろう?と思ったりもした。ファンタジーではあるが、決して童話ではない。いずれにしても次の「紅の魔女」に進もう。2022/09/25