内容説明
華文ミステリーの到達点を示す傑作!
名刑事クワンと弟子のローが挑んだ六つの難事件。
香港警察の「名探偵」と呼ばれた伝説の刑事クワン。2013年、末期がんで余命僅かな彼のもとに、難事件の捜査で行き詰ったかつての部下、ローがやってくる。
クワンが最後の力を振り絞り提案した前代未聞の捜査方法とは――。
戦後香港の現代史と一人の警察官人生を重ねながら、権力者と民衆の相克を描く華文ミステリーの傑作。
綾辻行人氏も絶賛!
最初の「黒と白のあいだの真実」を読んでまず、何と高密度・高レベルの本格ミステリであることか、と驚嘆した。
続く5つの中編も同様で、「本格」の典型からさまざまに逸脱していきながらも、すべてが実に本格ミステリ的な、優れた創意と技巧によってこそ成り立っているのだ。――という点も含めて、『13・67』は大変に感動的な1冊である。
※この電子書籍は2017年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
k5
74
『世界を売った男』がおもしろかったので。クワン元警視は天才的な捜査官だったが、末期の肝臓がんで脳波計を介してしか推理を伝えられないという、これまたSFチックな世界観なんですが、わりとオーソドックスで丁寧な謎解きで読みやすいです。だんだん時代が遡って、上巻は香港返還の日まで。下巻にはどんな仕掛けがあるか、わくわくしながら読み進みます。2021/07/19
owarai
64
ゴリゴリですよ、ゴリゴリ。筋金入りで、エネルギッシュ。緻密で、本格的。毛色が異なる3つの短編は、どれもメインディッシュ級の濃厚なミステリー。香港警察の天眼と呼ばれた刑事の人生を巡る逆年代記は、連作を読み進める程に、全体を通じて、社会派ミステリーとしての印影が浮かびあがる。どの紹介サイトを見ても、本作の批評は、こんな風に好意的。名だたる方々が、ゴリゴリ推すこの小説。半信半疑で上巻読んだ私も、アタリかもと思える納得の出来。後半を読んで、こりゃやられたわ!と言えるかどうか。ドチャクソ期待して進みます!2020/09/11
ざるこ
61
3篇。はじめの「黒と白のあいだの真実」があまり好みではなかった。YES・NOのからくりも予想がついたし。でもそれはクワンの人となりを深く知りえなかったからかも。「任侠のジレンマ」「クワンのいちばん長い日」凶悪犯罪に立ち向かう香港警察。見事な推理で解決へと導くクワン。事件発生からすごいスピードで物語は展開。幾重にも重なる謎と真相。練りに練られていて毎ページ濃すぎて圧倒される。きっと最後にまた1話目に戻った時、初読み時と違ってクワンの最期が胸にくることになりそう。時代を遡る構成だけど過去に大きな事件が?下巻!2020/09/24
cinos
56
文庫で再読。第1話の探偵はベッドディテクティブの上を行く脳波探偵という本格ミステリのすごさ、第2話の用意周到な罠、第3話の硫酸爆弾事件と脱獄事件。どれも長編にしてもいいくらいの密度の高いミステリです。2020/11/21
おたま
52
他の華文ミステリーのレビューを書いた折に紹介していただいた小説。本格ミステリーと社会派ミステリーを統合したようなものだということだが、上を読んだ限りでは本格の趣が勝っている。さらにこの「13・67」という題名は、2013年の香港から6編の短編で1967年の香港まで遡っていくことを指している。主人公となるのは「天眼」とも呼ばれる、推理力の鋭いクワンという警察官。香港で起きた重要な出来事を背景に、その時々の難事件を解決していく。難を言えば、あまりにも切れすぎて、もう少し「推理」の中身を読みたい。詳しくは下で。2022/04/18