内容説明
盗人と疑われ、番屋につきだされてきた青物売りのお駒を放免してやった同心の柏木千太郎。跳ねっ返りで威勢はいいが、早くに両親を亡くし、十一で人買いに売られ苦労して生きてきた娘だ。そんなお駒を陰から見守っているらしき謎の男がいた――。その正体とは?(表題作) 顔はないけど男前。のっぺら同心と仲間たちがあやかし騒ぎ解決に走る、妖怪捕物帖第三弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
タイ子
71
のっぺらぼう同心シリーズ第3弾。読めば読むほど面白くなる。今回は2つの物語とも泣けたわ~。もちろん、笑いどころも相変わらずあって楽しめましたが。あやかしと人との関係の難しさ、立ち入ってはいけない一線。あやかしの千太郎だから理解できることが事件解決に導く。今回のあやかしの正体が切なく、悲しい事情を抱えてるだけにホロリですよ。千太郎の家族が温かくて面白くて、特に実母の艶様最高!まだまだ続いて欲しいと願うばかりです。2019/07/16
papako
67
シリーズ続けて。やっぱりいいですねー。このシリーズ。少女とそれを助けた玄助。とんちんかんなのはなぜ?最後に誤解がとけてよかった。次は人面瘡ですか!しかしのっぺらぼうにとり憑く人面瘡って。いびきかいちゃうし。どちらも切ないんだけど、最後はほっこりできる。こういう時期にはこういうお話がいいですね。2020/04/09
がらくたどん
53
「あやかしもまた、江戸の誇る華」のっぺら同心千さんの捕物帖はとりあえずこの第三弾18年の文庫書下ろしまで。お題二つどちらも憑りつかれて迷惑だがどうも憎めないトンチンカンな妖の物語。第一話は不遇を蹴飛ばして元気に生きる青物売り少女の身辺で起きる盗みと喧嘩の切ない真相。第二話は千さんの手首に人面瘡として憑りついた刺殺被害者が心に抱えた闇と護り通したかったもの。人の則を解さない妖の必死な善意が仇を成す哀しさ。人だった時の「良かれ」がことごとく裏目に出た男の悔恨が招いたしょうもない末路。哀しくてどこか優しい妖噺♪2025/03/21
katsubek
45
シリーズ3冊目。長目の短篇2篇。「絆」ということばは、近年はよい意味で使うのがほとんど。が、古くは牛馬を繋ぐ綱から転じて、人を縛る「しがらみ」との意であったという。もちろん、本作で語られるのは、よい意味の絆。人との繋がりの中で相手を思い、大切にしたいと願う気持ち。その根底にあるものを見出そうと奔走する者たち。読後、あたたかな思いが残る。やさしい作品である。是非どうぞ。2019/11/22
kagetrasama-aoi(葵・橘)
41
「あやかし同心捕物控」第三巻。表題作「とんちんかん」はまさに、人とあやかしの関係は難しいことを感じる話。両親を亡くし頑張って生きている青物売りの少女お駒、彼女を守ろうとする玄助のすれ違いかたが本当にとんちんかん!でも笑いを誘われたり、ちょっと涙ぐむ場面もあったりで素敵な話でした。もう一作の「憑き物」何故あやかしの千太郎に人面瘡が付くかな!びっくりの展開、でもこちらも人面瘡の人柄(?)が子供思いで、ほっこりする話でした。そうそう千太郎の上司の筆頭同心の緒方さんが相変わらず可哀想な役回りなのが笑えました。2021/11/19