内容説明
失踪していたエミリーがとうとう姿を現した.そんなとき,日増しに衰弱していたドーラが,とうとうあの世へ旅立った.エミリーから託されたハムへの手紙を持ってヤーマスへ向かったデイヴィッドであったが,折しも嵐が襲いかかり,怒号する大海原に難破船が浮かんでいるとの話を耳にする….(全5冊完結)
目次
目 次
第五十章 ミスター・ペゴティーの夢が実現する
第五十一章 長き旅路の始まり
第五十二章 爆発に立ち合う
第五十三章 回想、再び
第五十四章 ミスター・ミコーバーの取引
第五十五章 嵐
第五十六章 新しい傷と古傷と
第五十七章 移住者
第五十八章 不在
第五十九章 帰国
第六十章 アグネス
第六十一章 悔悛した二人
第六十二章 光が射す
第六十三章 訪問客
第六十四章 最後の追想
解 説
ディケンズ略年譜
注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syota
28
長い長い物語もようやく大団円。これだけ付き合うと作中人物に愛着がわき、別れが名残惜しくなる。愛読していた連載漫画が最終回を迎えたような気分だ。途中、中だるみがあったり、様々なエピソードすべてに決着をつけようと最後駆け足になったりと不満点もあるけれど、19世紀英国社会にどっぷり浸って、ディケンズ・ワールドを心ゆくまで堪能できた。心を強く揺さぶるような強烈さはないが、デイヴィットと彼を取り巻く人物群像をじっくり丹念に描きながら娯楽性も忘れない、ディケンズらしさ満開の良作と思う。後味が良いのもうれしい。2016/10/29
コニコ@共楽
25
最終巻を新潮の他の岩波文庫、石塚裕子訳で読んでみた。岩波文庫は挿絵があり、古典を読んでいるという親しみを覚える。表紙の絵も「これはあのシーン」と思い描くことができて楽しい。過酷だったけれど生き生きとした子ども時代とは対照的に、重苦しい不幸が重なり、喪失感を抱える心象描写も重厚だ。十数年という”時”を経てデイヴィッドもアラフォーとなっている。オースティンの作品もそうだが、最後の部分でマイナーな登場人物でも「”あの人”のその後」が描かれていて、読者サービス満点だ。特にミス・モウチャーの働きに目を見張った。2022/11/10
俊
21
面白さに関しては文句なし。強烈な個性をもった登場人物が作る物語は本当に楽しかった。1巻を数十ページ読んでみて文体が合えば、全5冊も一気読みしてしまうだろう。読後感も爽やかだ。ただストーリーやキャラクターをかなりデフォルメしているので、現実感が薄れ、少し浅いと感じてしまう部分がある。だからドストエフスキーのような重厚さが好きな人にはちょっと物足りないかもしれない。 2015/07/08
しんすけ
16
物語が大団円に入り結末に向かって走っているような雰囲気だ。 大陸を放浪した末にロンドンに舞い戻り貧民窟に潜んでいたエミリーが見つかる。 ユライア・ヒープの今までの数々の犯罪が明らかになる。伯母さんの倒産もその犯罪によって仕組まれたことが明らかになる。 アグネスの父もヒープの陰謀で貶められていたことも明らかになり名誉を回復する。 この切っ掛けを作ったのがあの貧乏神のミコーバーだったから意外な感がしないでもない。ミコーバーは自分のことになるとだらしない男だったが、他人のためなら俄然論理的に動き出すのが面白い。2021/04/15
tokko
15
何度か繰り返して読むうちに、ようやくドーラの魅力が分かったような気がする。53章では思わず泣けてきた。でも一番この巻で面白く読めるのは52章だろう。それまでオッチョコチョイの借金まみれだったミコーバーがかっこよく見える。今回は挿絵付きだったので、なお楽しめました。2013/10/17