若い読者のための経済学史

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若い読者のための経済学史

  • ISBN:9784799106846

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内容説明

イギリスには子供たちを教育するための建物や本があり、また、教師がいる。それなのに、なぜ、ブルキナファソはそうではないのか。これはとても難しい質問で、だれも原因をつきとめることはできない。
だが、経済学はそれを説明しようとする。ここにこそ、わたしたちが経済学に魅了され、そうした問題について考えようとする、より大きな理由がある。

イギリスの経済学者アルフレッド・マーシャルは、経済学者には「冷静な頭脳と温かい心」が必要だ、と言っている。
経済学者たちは、経済発展の一方で置き去りにされた人々の苦境を見過ごしてきた、と批判されることもある。
21世紀初頭、銀行の無謀な行いのせいで、深刻な経済危機が起こった。それを予測できなかったために、多くの人が経済学者を責めた。経済学者の多くは、金融や巨大銀行が支配する経済で利益を得ている人々から影響を受けている。危機を招いたのはそのせいだ、とも考えられた。

おそらく、経済学者には“冷静な頭脳と温かい心”以外に必要なものがあるのだ。それはたとえば、自己批判的な目や、自分の関心や習慣的なものの見方を越えた観点などである。経済の歴史を学ぶことは、その助けになるだろう。
過去の経済思想家たちがそれぞれの関心と環境のもとで、どのようにその考えにたどりついたかを知れば、わたしたちの考え方がどうであるかを、より明らかにできる。だからこそ、経済思想を歴史とともに考えるのは興味深いことであるし、それはわたしたちがより豊かに生きることができる世界を創造していくためにも不可欠なのである。

目次

1 冷静な頭脳と温かい心/2 空を舞う白鳥/3 神の経済/4 黄金を求めて/5 自然の恵み/6 見えざる手/7 穀物が鉄に出会う/
8 理想の世界/9 養う口が多すぎる/10 世界の労働者/11 完全なる均衡/12 太陽を締め出す/13 戦争の利益/
14 騒々しいトランペット吹き/15 コークか、ペプシか/16 計画する人/17 お金を見せびらかす/18 排水口のむこうへ/
19 創造的破壊/20 囚人のジレンマ/21 政府の専制/22 ビッグ・プッシュ/23 経済学はすべてに通ず/24 成長/25 美しい調和/
26 ふたつの世界/27 浴槽を満たす/28 道化師による支配/29 貨幣錯覚/30 未来の予測/31 攻撃する投機家/
32 虐げられている人々を救う/33 わたしを知り、あなたを知る/34 破られた約束/35 消えた女性たち/36 霧のなかの頭/
37 現実世界における経済学/38 野獣化する銀行家/39 空高くそびえる巨人/40 なぜ経済学者か/索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

73
読んで、イギリス風な例えに覚えがあって確認したら『1分間で経済学』の作者だったのね。古代メソポタミアから現代に至るまでの経済の成り立ちとその思想と社会への影響について語っています。今、市場が善意と倫理観を持って自己利益を計算する人間によって動かされる時代から合理的でもなく、倫理観と欲望の限界への歯止めが利かずに格差が広がる時代になりつつ、ある中で何をすれば良いのか。個人的にレーニンの帝国主義によって引き起こされる戦争を転換させる思想やアマルティア・センなどの経済学者の存在を知れました2018/04/19

コウメ

53
chapter8「理想の世界」/貧乏な人が貧乏なのには、それなりの理由がある、と言われることがある。つまり、怠け者や悪人であるために貧しいのだと。しかし19世紀の作家ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」の登場人物であったファンティーヌは、工場が解雇されたのち、娘を養うため前歯を売るしかなくなった。ファンティーヌは怠け者でも悪人でもなかった。人間より利益を大事にする冷酷な経済の被害者だった。/この小説をきに、貧乏人はみずから不運を招いているという考え方に疑問がもたれはじめ、2019/05/16

nobi

50
冒頭“西アフリカの貧困国ブルキナファソの人々とこの本の読者の巨大な格差” という意外な話から、そこに経済学者キシテイニーの想いが見える。貧豊の差は無くなる〜拡大する、経済安定に政府の介入が必要〜ほうっておいても安定する、食料が行き渡らないことと食料がないこととは違う、4世紀のアンブロジウスは金貸し業者に死を命じ20世紀のピケティは資産の収益率>経済の成長率に気づく…。「資本主義は発達するにつれて不安定になる(ミンスキー)」の通り投機が経済を揺るがす時代に。経済が原因でも結果でもある人類の歴史を辿るよう。2023/09/23

コウメ

49
フランスの歴史学者アレクシ・ド・トクヴェルは、1830年にマンチェスターを訪れ、新しい社会を兆しを見て驚いた。高層の工場から噴き出した煙や煤が道や家屋の上に降り注いでいた。製品はより安くなり、新しい製品も開発された。のちに「産業革命」と呼ばれるようになった。/その結果、大工地所有者は富と権力をもつようになった。過去において土地は、村の古いしきたりに従って人々のあいだで分けあったものだが、土地所有者が囲い込みをして農地を広げるようになり、村の農夫や羊飼いを賃金で雇って、その土地で働かせた。2019/05/15

コウメ

48
chapter10「世界の労働者」/「妖怪がヨーロッパに出没している。それは共産主義という妖怪である。」共産党宣言の冒頭の1行。この妖怪は資本主義とは別の共産主義が資本主義を追いやろうとしていた。/カール・マルクスと友人のフリードリヒ・エンゲルスという2人のドイツ人。マルクスを"社会の未来を予知した偉大な思想家"と言う人もいれば"経済学を危険な道に進ませた悪者だ"という人もいる。/マルクスが興奮したのは、「こんにちはまでのあらゆる社会の歴史が階級闘争の歴史」といった。2019/05/27

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