内容説明
一糸まとわず,ほうきで飛び立つモスクワの夜.アパートのひと部屋ではじまる悪魔の大舞踏会.マルガリータの「真実の永遠の恋」に,ユダヤ総督の二千年の苦悩に許しは訪れるのか? 「私の読者」ある限り,忘却の灰のなかから蘇り続けるブルガーコフの最高傑作――「原稿は燃えないものなのです」.(全二冊完結)
目次
目 次
第 二 部
19 マルガリータ
20 アザゼッロのクリーム
21 空を飛ぶ
22 蝋燭の明りのもとで
23 悪魔の大舞踏会
24 巨匠の救出
25 イスカリオテのユダを総督はいかに救おうとしたか
26 埋 葬
27 五〇号室の最後
28 コロヴィエフとベゲモートの最後の冒険
29 巨匠とマルガリータの運命は定められる
30 出発の時
31 雀が丘にて
32 許しと永遠の隠れ家
エピローグ
解 説
ブルガーコフの作品との出会い
注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
329
偽ヨシュア伝の世界は、ソ連社会の反措定だったのか。あるいは、現実を映し出す鏡像として機能していたと見るべきなのだろうか。重く沈潜する世界にあって、一人自由に飛翔するのがマルガリータである。では、彼女が希望を運ぶのかといえば、そうではない。悪魔の一行がこの世界にもたらしたもの―それは混沌でしかなかったのではないか。ブルガーゴフは、あらゆる規制を桎梏とする極めてアナーキーな世界を庶幾しているようにも思える。ソ連であるが故に生み出された鬼子。ただし、極めて魅力に富んだ鬼子である。私には評価も難しく難解な作品。2016/07/24
こーた
218
キリスト教にも『ファウスト』にも、ソヴェトの政治情勢にも疎いぼくには少々難解な小説だった。それでも悪魔一味の競演と、巨匠とマルガリータの物語にはぐわっと心を掴まれて愉しく読んだ。訳者解説を読み(じつを云うとこの解説がいちばんおもしろかった)、著者ブルガーコフと著作の辿った数奇な運命を知り、その構造の特異さにあらためて驚かされる。原稿は燃えないものなのです。いまぼくらがこの作品を読むことで、ようやく物語の円環は閉じ且つまた拓けていくのかもしれない。ん、てことはそのうちぼくの目の前にも悪魔が現れる、のかな?2021/06/25
扉のこちら側
78
2016年1084冊め。【244-2/G1000】ピラトゥスが何を考えていたのか、イエスの処刑を命じた時に彼に葛藤はなかったのか。神を信じるのか悪魔を信じるのか、それとも何も信じないのかというのがこの本のテーマなのだろうか。何にせよ、悪魔たちがまあ楽しそうだこと。そしてイエスキリストによって巨匠とマルガリータは祝福されたのでめでたしめでたしなのか。私にはなかなか難しい作品だった。2016/12/16
HANA
72
悪魔の狂騒が中心だった上巻に対し、下巻はマルガリータの冒険が中心。とはいえ彼女も単なるヒロインではなく、魔女になったりモスクワで大暴れしたり果ては魔宴の女王になったりと大活躍。。あと下巻では最後の部分を除いて、悪魔があまり悪魔らしくなかったなあ。やはり悪魔というよりトリックスターな感じだったし。それについては読み終えてエピグラフを見ると、改めてそこに込められた意味が感じられた。そして宴はいつか果てるもの。様々な騒ぎの後には巨匠の小説の終わりと共にやってくる、静謐なラストの余韻にはいつまでも酔えそうであった2017/01/10
えりか
63
クラクラと目眩のするような奇想天外な物語。素晴らしかった。とてもロマンチック。空飛ぶ全裸ヒロインのマルガリータの巨匠への愛の力強いこと。「あなたの睡眠を守るのは私」優しさと激しい情熱をあわせ持つマルガリータの魅力に溢れる下巻。死者たちの舞踏会の光景はおぞましいのに、華やかでチカチカと眩しかった。悪魔たちの不条理な悪事は旧ソ政権への批判。ピラトゥスや、巨匠とマルガリータのように永遠の旅立ちに込められた自由への渇望や「原稿は決して燃えない」という言葉にこめたブルガーゴフの思いが伝わる。大好きな一冊になった。2017/03/11