内容説明
「それでは,どうしても悪魔は存在しないと言うのですか?」首は転がり,黒猫はしゃべり,ルーブル札が雨と降る.黄色い花を抱えた運命の女,ゴルゴタを焼く灼熱の太陽……春のモスクワを舞台にブルガーコフ(1891-1940)が描く,20世紀ロシア最大の奇想小説,物語のるつぼの底に待つのは何か?――「私につづけ,読者よ.」(全2冊)
目次
目 次
第 一 部
1 見知らぬ人とは口をきくべからず
2 ポンティウス・ピラトゥス
3 第七の証明
4 追 跡
5 グリボエードフでの事件
6 予言どおりの精神分裂症
7 呪われたアパート
8 教授と詩人の対決
9 コロヴィエフの奸策
10 ヤルタからの知らせ
11 イワンの分裂
12 黒魔術とその種明かし
13 主人公の登場
14 雄鶏に栄光あれ!
15 ニカノール・ボソイの夢
16 処 刑
17 落ちつかない一日
18 不運な訪問者たち
注
訳 注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
354
この小説はブルガーゴフによって、旧ソ連邦時代の1930年代に書かれている。ほぼ同世代のザミャーチンは硬質で機械的な物語世界を構築したが、こちらは幾分かコミカルで幻想文学風の趣きもある。もちろん、その背後には息詰まる官僚制社会が横たわっていることは言うまでもない。ただ、その明日の知れなさは、カフカのような根源的な不安ではなく、よりヒリヒリとした現実がすぐ裏側にあるという風だ。上巻を読む限りでは未だその世界像の全体はおろか、構想も明らかではないが「わたしにつづけ、読者よ!」との力強い言葉に導かれていざ下巻へ。2016/07/23
こーた
239
モスクワに突如現れた悪魔たちによって引き起こされるドタバタ喜劇、なのか?編集長は轢かれてしまい、詩人は錯乱し、劇場には魔術によって贋金が降る。新しい人物が現れては立ち所に不幸に陥り、死体で遊び、聖書は書き換えられ、社会諷刺?体制批判?があって、読み出せばたちまち惹き込まれて愉しいのだけど、誰が何やら、だんだんワケがわからなくなってきたぞ。巨匠はちょろっと出てきたけど、マルガリータはまだ出てこない。〈私につづけ、読者よ〉って、ホントについてってだいじょぶだよね?悪魔のささやきじゃないことを祈りながら下巻へ。2021/06/19
ケイ
160
モスクワに降り立った悪魔。神を信じない男たちに対し、別れ際にこう言う「神を信じないのかい。キリストはいるよ」と。悪魔がいるなら、必ず神はいなくてはいけないさ、そらね、勿論。彼とお付きの者と邪悪な猫とで愉快な騒ぎを引き起こす。愉快なのは彼らにとってだけで、登場人物たちにとっては大変な迷惑でしかないのだけれど。でもどこか滑稽。このユーモアさはチェーホフでもみる気がする。作者は20世紀前半の人。ピラトのお話が興味深い。確かにピラトが死刑にしようとしたのではないのよね。さて、下巻の展開が楽しみ。2017/06/07
扉のこちら側
81
2016年1083冊め。【244-1/G1000】ロシア最大の奇書と言われている作品らしい。1930年代のモスクワで悪魔らしきものが暴れまわるのだが、その辺りが当時の風刺。執筆当時はスターリン政権下で、著者が出版前に亡くなると妻は原稿を秘匿し、死後26年経ってようやく日の目を見たとのこと。悪魔が出てくる幻想小説という期待をよそに「精神病院」なのか。そうか。下巻へ。2016/12/16
HANA
76
いやはや兎に角面白い。1930年代のモスクワを舞台に悪魔が大暴れ、関わった人は首が飛んだり、精神病院行きになったり。それでも深刻な感じを受けないのは、悪魔が完全にトリックスターになっていて、その現れる所現れる所が全て祝祭空間になってるからかなあ。劇場で大暴れするシーンなんか特にそれが顕著だし。登場人物は大概碌な目にあっていないのだが、それでもコミカルで全編を奇妙な明るさが覆っているのも面白い。ポンス・ピラトの物語とマルガリータと巨匠の恋を暗示させながら上巻を読了。作者に続いて我々も下巻へ続け。2017/01/06
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