内容説明
殿中での吉良への刃傷沙汰により、浅野家は断絶され、赤穂浪士は仇討の機を窺う。一方、吉良方が頼りとする上杉家では、家老の千坂兵部が女忍者を用い、仇討防止に色仕掛けで浪士の骨抜きを企む。大石内蔵助が同志と密議の最中に、妖美と怪異の忍法が華と炸裂した! 殺気と妖気が奔流のごとくに交錯する!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sato19601027
46
忠臣蔵の日。日本人は「忠臣蔵」が好きである。浪人になってもなお、亡き殿の無念を晴らそうという忠義が、日本人の心を動かすのであろう。しかし、この本の主人公は、忠義を憎む伊賀忍者である。上杉家の国家老から受けた密命は、赤穂浪士を殺さずに志をつぶすこと。妖艶な忍術が炸裂するファンタジー時代小説だ。1962年刊行なので60年も前の作品だが、色褪せることはなく、忍者物に夢中になっていた頃を思い出してワクワクする。(元禄14年3月14日浅野内匠頭による刃傷事件、元禄15年12月14日赤穂浪士による吉良邸討ち入り事件)2023/12/14
北風
33
赤穂浪士に仇討ちをやめさせるため、腑抜けにすべく暗躍する忍者の話。「殺せ」ではなく「腑抜けにしろ」は、無茶というかハードな任務だと思いますよ。くのいちさん達の苦労が忍ばれます…。2016/05/12
藤原
20
松之大廊下の事件から赤穂浪士の討ち入りまでの2年間に上杉家の下で討ち入り阻止を謀る忍者たちの暗闘を描いている。主人公は忠義を建前にして自分よりも将軍を選んだ恋人に嫌気が差し、女と忠義が大嫌いになった忍者。積極的に戦うというより全体を俯瞰して、流れに沿わない忍者たちを圧倒的な戦闘力で始末していく。この主人公おそらく忍法帖シリーズでも最強クラス。将軍の寝室で恋人を刺身に変えるオープニングは圧巻だし虚無感漂うラストも最高だった。一人また一人と退場していく浅野家臣たちも素敵だった。特に毛利小平太。2020/02/19
きょちょ
17
吉良邸討ち入りを阻止するため、赤穂浪士暗殺を上杉藩主から命じられた能登の忍者。暗殺でなく、赤穂浪士に討ち入りの意志をなくさせようと企む上杉藩国家老から命じられた能登の女忍者とリーダーである伊賀忍者。いろいろな策で、結局討ち入りの赤穂浪士は史実通り四十七人に。忍法ももちろん面白いが、この作品で最も素晴らしいのは、討ち入りの為にあるいは殿中での刃傷沙汰の為に、悲劇の人生を送ることになる赤穂藩の武士の妻や妹や娘たちをしっかり描いているところ。そこが風太郎の素晴らしさでもある。★★★★2015/12/09
金目
16
上杉家家老の密命を帯びた無明綱太郎と女忍者達、吉良上野介の首を狙う赤穂浪士、浪士を討ち取ろうとする能登忍者の三つ巴。松の廊下刃傷から討ち入りまでの期間の、脱盟者を中心に物語る。抜ける方も残る方も救いがねぇなおい。目次見ると中盤で内蔵助が抜ける様に見えて驚いたけど、如何にも昼行灯らしい傑物に描かれていて納得。圧巻は小平太崩れの章。忠にしろ恋にしろ、女の方が凄絶だなぁと感じる。忠義と女に嫌気の差した綱太郎がさながらニンジャスレイヤーのようだった。忍者が、出てきて殺すwwwこれに尽きる2015/11/11