内容説明
第一次大戦直後の1919年に刊行された初版の完訳。ドイツ・ロマン派の徹底批判の書であるのみならず、ヨーロッパ精神史の一断面を鮮明に切りとった、すぐれた洞察に満ちた文献。
目次
序章
第一章 外部的状況
第二章 ロマン主義精神の構造
第三章 政治的ロマン主義
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中玉ケビン砂糖
39
シュミットの政治哲学における論法は、重ねて言うが極めて巧みでしかも隙がない。しかも明快でわかりやすい。「だから」危ういとも言える。その思想変遷を追うと概ね、「純粋に公法学者として出発し、ワイマール共和国における自由主義的民主政への問題意識が通底する前期」・「理想的な国体強化のための理論を広げつつも、政権を掌握したナチスに危険意識を持ち始め、こっそりフェードアウトしかけた所に三行半をつきつけられてあえなく余生を故郷で隠棲した後期」に分けられる。戦後に書かれた著書については、初期の彼の論旨を時代時代の戦争に2021/03/06
mstr_kk
3
シュレーゲルを読むと、ロマン主義は単なるお花畑ではなく弁証法だ、ということになっているが、シュミットはその弁証法自体がお花畑だ、と手厳しい。総じてロマン主義に対して手厳しいが、たいへん勉強になるだけでなく、僕自身の感性がいかにロマン主義に汚染されているか、考えさせられる。2013/04/24
肉欲棒太郎
2
「ロマン主義的な作用は今日と此所との否定の中にある。」「ロマン主義者は虚無へ逃れるのではなく、一つの実在を求めるが、ただ現にあるものとは異なる別の実在をこそ求めるのである。」「イロニイによって彼は窮屈な客観性から脱れ、何かの上に釘付けにされることから身を守る。イロニイの中にはすべての限りない可能性の留保が含まれる。」「進歩的ならざるもの、それがロマン主義者である」「政治的行動が始る時、政治的ロマン主義は終る。」2017/08/28
雁林院溟齋居士（雁林）
2
政治的ロマン主義は、主観が神に入れ替わった機会原因論である。全くの人間的有限性にも関らず世界の全てを独創的な主観に帰するが故に、擬似自然哲学的な「対立」と「真の」概念を無限に産み出し、単に全ての可能性を可能性として保持することに拘り、則ち最高度にイロニックに、現実に対する全くの無為に帰結する –ロマン主義とは何たるかを政治史的/政治思想的に考察した重大な一視角。政治と哲学、政治と芸術を考える上で必読の大名著である。2012/09/15
Lieu
0
ドイツ・ロマン主義を批判してカトリックの真正の保守主義を擁護しようという論旨なのだが、シュミットの批判が筋の通ったものであればあるほど、ロマン主義の政治思想のいい加減さがわかり、仮想敵として適切なのかと疑問に思う。しかし論敵の浮薄な正体をはっきりさせて自分の立場を地に足ついたものに見せるのは、狡いがレトリックの上手さといえるだろう。2022/12/23
