内容説明
見世は繁盛しても、やぶ浪の主・浪介と女房のおぎんには、頭を離れない悩みがあった。子宝に恵まれないことだ。有名な易者の見立てでは、二人で戌亥(北西)の方角に旅に出るとよいという。ひと月の休みをとっての夫婦水入らずの道行き。信濃へと向かった二人を待っていたのは、一面にひろがる真っ白な蕎麦の花だった。数々の美味と人情に心温まるシリーズ第5弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
瀧ながれ
23
子宝祈願に、そばの花が満開の信濃を旅する夫婦。とくにおおきな事件はなくて、出会った人に江戸蕎麦を振る舞ったり、そこで人探しを請け負って江戸に戻り、芽が出ない相撲取りに新しい道を示したり…。そういえば相撲取りの場面では、「夢をあきらめる」ことを思いました。続ければいつか叶うとかいうけど、叶わないことが確かにあって、いつそれを認めるかは、すごく難しい判断なのな。四方八方から「もうやめろ」と言われてるの読むのは辛かったけど、いい話でした。2015/06/14
izw
20
一月休んで、信州への旅。一面の白い花がゆらめき、周りに色とりどりの紫陽花が咲いている蕎麦畑の描写は素晴らしい。蕎麦浄土と呼ぶにふさわしい。「出世おろし」は辛味大根のおろし蕎麦。信州から期待されて江戸に出てきたが関取になれなかったが、ねばり強くやぶ浪で修業して田舎で蕎麦屋を開いた大颪にちなんだ名前。品書きに並んでいると由来を思いだし、ホロリとしそうな名前である。2015/08/29
ううち
13
もういいかな、と思っていたシリーズでしたが…つい購入。完結なのかな?今回はちょっと変わって、子宝を願い信濃へ旅に。蕎麦畑の描写が素敵でした。辛味大根でしゃっきりと角の立ったお蕎麦が食べたくなりました。あとがきで作者の方がマラソンをしているとあって驚きました。2015/09/03
mikipon
12
登場人物の台詞回しや、情景描写がのどか屋と重なるけど、美味しくて暖かい話だから良し。同じ江戸に二つの店があれば・・・と考えてみるのも面白い。今回は信濃方面への旅ということで、間に挟まれる民謡(でいいのかな)が良い味でした。2015/02/03
Kira
8
図書館本。シリーズ第五弾。巻末に収録された「信州蕎麦畑取材記」で、作者の趣味や蕎麦に対する思い入れを知ることができて面白かった。 2018/07/21