内容説明
歴戦の同志を失いながらも、梁山泊軍は、童貫軍と全軍あげてのぶつかり合いを続けている。乱戦の中、戦場の中央に陣取る郭盛軍は少しずつ前進を始めた。童貫は『幻』の旗に向かい、岳飛は楊令軍を止めるべく疾駆する。一方、金軍は宋領深く南下し、青蓮寺は北の大商人たちの財産接収を始めていた。歴史が大きく動こうとするなか、ついに楊令と童貫とが戦場で邂逅する。楊令伝、圧巻の第九巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
262
大水滸の中での、一つのピークといえる出来事である童貫戦。それがこんなにもあっさりとした幕切れを迎えるとは、予想を裏切られた。少なくとも、一冊まるまる使って描ききるものと思っていたので、こんなに前半の方で決着がつくと、少し拍子抜け。しかし、その最期は見事なものだった。その後の展開は、まだ全容は見えないものの、童貫ロスで緩んだゴムのようになった周囲の人々の様子を、少し退屈なくらいスローテンポで見せられる。目を引いたのは候真のパート。恋の顛末も読まされたが、戴宋との間の不穏な空気も、今後の気になるところ。2022/01/29
しんごろ
179
楊令のたったひと言で、宋禁軍との戦は終結した。戦死したあの漢が、死して尚、漢達の心に住んでいた。終結して、宋は国としてどうなるか、金国は宋に侵略するのか、そして、梁山泊は新しい国として生き残りをかけて、文治省の漢達が眠る暇がないほどかけずりまわる。そんな中で、確執、交渉、不穏な動きをみせ、戦いは終わっても国づくりという新たな武器なき戦いがやってきた。次巻がますます気になりますが、今は、「宋禁軍、童貫元帥に敬礼!」2018/10/05
財布にジャック
68
ついに待ちに待った時が来ました。それなのに、それなのに、どういう訳か泣けてきます。この巻はクライマックスなのに、ワクワクして然るべきなのに、切なくて苦しくて胸がいっぱいになりました。楊令の目指している「光」や呉用の言う「志」は確かに尊いものだとは思いますが、その陰で物語から去っていった登場人物のひとりひとりを想い涙してしまいます。迷走する梁山泊が、この後どんな運命を辿るのか、タオル用意してお供します。2012/03/03
Kircheis
65
★★★★★ 童貫ついに落つ。 最後まで武人として生きた。敵ながら凄い漢だった。 しかしこの後、どうやって盛り上げるのか?2018/04/09
オカメルナ
57
ついに長い戦いに終止符が打たれた。絶対的王者を倒したのに何だか全然嬉しくない。むしろ寂しい。それほど彼は悪心の微塵もない軍人の中の軍人だった。事実上、宋という国は滅びたという事でしょうか・・・これから梁山泊は、どういう国を作って行くんだろうか?怪しい存在感が変わらない李富はどうする?岳飛は?金国は?これまでは対禁軍戦のことばかり考えていたけれど、まだまだ戦いは続くのよね。2012/10/05