内容説明
書評家絶賛の書き下ろしシリーズ、完結篇!
世間が開国で揺れる中、登鯉の父である人気浮世絵師の歌川国芳は、一門の弟子たちと、相変わらずの江戸っ子の稚気と覇気でのんびりと暮らしている。
国芳の描いた浅草寺の〈一ツ家〉の奉納額は将軍の上覧にも与り、江戸中の大評判となる。
しかし、そこに安政大地震が発生、その混乱の中で倒れる国芳、ちまたに氾濫する鯰絵、そして国芳の描いた一ツ家の祟りを恐れる不気味な噂も聞こえてくる。
絵筆を握れなくなった国芳、一門を背負うことになった登鯉、そして弟子たちは懸命に活きる道を模索する。さらには登鯉の、もどかしい恋の行方は?
悲しいのに明るくて、笑えるのにせつない、書評家絶賛の書き下ろしシリーズ、ついに感動の完結!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
115
この巻で終わりです。最初はあまり好きでなかった国芳の娘もなにか気になる存在となっていました。最後はさまざまな人物が舞台から消えていきますが、いい結果で終わっています。今まであまり知ることのなかった天才であった国芳の生涯というものがよくわかりました。2017/08/31
はつばあば
69
若い時は誰もが、自分が病んだり老いたりするなんて考えないし、ましてや自分だけは不幸に遭わないつもりでいる。国芳一門だって最初から花が開いたわけじゃない。下積があって苦労が花開く。咲き乱れた後には・・花も散る。皆に愛された国芳一門。史実に基づきながらの小説だから余計にのめり込む。作家さんの創作部分を化粧に例えるなら、ほんのりとさした紅の具合がとてもいい。色気・意気・義侠心 親子の愛情。これらのシリーズ手放せません。2017/07/09
こばまり
53
アァついに読み終えてしまったかと思うほど、楽しい時間を過ごせた。最終巻のあとがきと解説に感慨もひとしお。門外漢ながら本シリーズが纏う光と影の配分が、私には名作『幕末太陽傳』を彷彿とさせるのだった。憧れる江戸がある。2022/03/03
真理そら
19
ああ、読んだ、読んだ。まずはありがてえ。読書の楽しさを満喫させてくれたシリーズもこれで最後かぁ。『帰雲』では『ヨイ豊』(梶よう子)を思い出して切なくなった。『写真」では懐かしい田辺定輔が不器用だけど現実的な登鯉への愛を見せてくれる。『地震』では乃げんと小安が顔を合わせるが、国芳の卒中でそれどころではない。『盆々』で出っ歯の周ちゃん(河鍋暁斎)が登場したので『東京新大橋雨中図』(杉本章子)を読み直す気になった。画工として生き一門を工房として存在させた国芳は画風だけでなく生き方もとても現代的だ。2017/12/16
三平
19
シリーズも遂に完結。世間の人々を楽しませる絵を描きたいと筆を取り続けた国芳とその心意気を受け継いだ娘の登鯉を始めとする一門の面々との楽しい時間も最後。次へ次へと頁をめくる手が止まらないながらも、終わりの近づくのが本当に惜しい作品だった。今作は安政の地震のエピソードも入り哀しい話も多かったが、幕末の江戸のディープな文化、魅力的な登場人物たちが織りなす物語を堪能させてもらった。特に脳梗塞になった国芳とそれを見守る娘の絆には涙。単なるフィクションではなく多くの資料を元に当時の人々の喜怒哀楽が書かれた良作。2015/10/24