内容説明
歌川国芳と娘の登鯉と一門を巡る人間模様
<鬼振袖(おにふりそで)>とは薹(とう)の立った娘の振袖姿のこと。浮世絵師国芳を父に持つ侠風(きゃんふう)な美少女登鯉にも、いつの間にか甘やかな娘時代は過ぎてゆく。初恋の男の凄惨な自死、遠島になった最愛の男との思いがけない再会とその恋の行方、しがらみに縛られて素直になれない若親分への淡い想い……。
一方、相変わらずの即席頓智(そくせきとんち)で発禁覚悟の諷刺画を描きまくって世間の喝采を浴びていた国芳は、遠山が奉行を勤める南町奉行所隠密廻りによって、要注意人物として行状を密かに探索されることに……。昔なじみの金さんがなぜ? 『侠風むすめ』『あだ惚れ』が絶賛された、シリーズ第3弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
99
あまり世間のことに無関心そうな国芳も娘についてはやはり人並みに心配のようです。この娘もいろいろあるのですが落ち着きません。最近のマスコミを騒がしている女性たちを思い起こしてしまいます。私はやはり国芳とそれをめぐる弟子たちのやり取りの方が興味深く読んでいます。2017/08/17
はつばあば
59
可愛い娘もいつしか19。親父としちゃ早く嫁にやりたいが、やりたくない。鬼振袖・・せめて三十振袖といっとくれ。まだまだ三十路には間があるんだから。?鉄蔵さんの娘のお栄さん?。女としちゃ何もできやしないが・・北斎さ。それにしても老中も尾張の殿様も、江戸も平成も変わらないミーハー。それだけ国芳は凄かったのだろう。庶民の政府に対して「あべやめろ!」よりたった一枚の絵の方が効果があるってことだ。一巻より二巻、二巻より三巻と初恋を忘れられない登鯉と乃げんへの想いと重なる。?新刊が来てるのに次に移れない。続きが気になる2017/07/07
こばまり
44
大名よりも石高の多い家老職についての説明が分かりやすくて、恥ずかしながら積年の疑問氷解。物語に起伏があって登場人物も生き生きしているもんだから、読んでいるこっちも笑ったり泣いたりで大忙し。表紙もいい。2022/02/23
さく
15
このシリーズは本当に面白い!大きな声では言えないけど、私も国芳の狸の絵が好き。でもこれが本の表紙に使われるなんて、国芳もびっくりだろうな。2017/03/09
真理そら
14
登鯉が少女から大人の女になるにつれて恋に臆病になっていくのが妙にリアルだ。『濡色』は芳雪の洗い髪の女の絵で始まる。読み終えてから芳雪の最期と登鯉の心情を考えながら見ると感慨深いものがある。芳雪と登鯉が英泉とお栄に重なる。『市芳』は時代小説ではおなじみの尾張のゴタゴタの中心になってしまった幼い殿様が可愛く切ない。乃げんが島から戻ってきたのに島の女と娘がいた。登鯉も切ないけれど乃げんの妻も切ない『去跡』。全体的に2巻までより切実な雰囲気が強いが読み応えはあった。2017/12/14