ふぉん・しいほるとの娘(上)

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ふぉん・しいほるとの娘(上)

  • 著者名:吉村昭【著】
  • 価格 ¥979(本体¥890)
  • 新潮社(2013/05発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784101117317

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内容説明

幕末の長崎で最新の西洋医学を教えて、神のごとく敬われたシーボルト。しかし彼は軍医として、鎖国のベールに閉ざされた日本の国情を探ることをオランダ政府から命じられていた。シーボルトは丸山遊廓の遊女・其扇を見初め、二人の間にお稲が生まれるが、その直後、日本地図の国外持ち出しなどの策謀が幕府の知るところとなり、厳しい詮議の末、シーボルトは追放されお稲は残される。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

419
上巻はいにしえの長崎の情景を背景に展開するが、冒頭の遠見番が波間はるかにオランダ船を望見するシーンは、物語の全体を象徴するかのような趣きである。この作品でも、綿密な資料に基づいて書かれているのであろうが、吉村昭の歴史小説は、史実とその時代を生きた人々と、そして彼らが生きた世界とを淡々と、しかしまた情感豊かに描いてゆく。主人公の選び方も上手い。歴史に名高いシーボルトその人ではなく、あえてその娘に焦点をあてるという心憎さである。もっとも、上巻ではシーボルトと母親の滝が物語を牽引しているのであるが。2022/09/20

yoshida

163
日本史で知ったシーボルト事件。事件の背景や顛末、人間関係を理解出来た。そしてシーボルトと其扇ことお滝の娘である、お稲は学問を修める為に伊予に渡る。シーボルトの弟子の下での生活が始まる。多大な史料に基づく長崎、出島の風俗、シーボルト事件の描写。淡々と綴られる長編であるが引き込まれ一気に読ませる。読み進むにつれてページが減るのが惜しい作品。吉村昭氏の作品の最高峰と言えるのではないか。江戸時代に日本人とドイツ人のハーフであるお稲がこれからどのような生涯を歩んだのか。小説でありながら知的好奇心を刺激される作品。2016/02/15

kinkin

90
オランダから来たシーボルトと遊女・其扇の出会い、長崎・出島で過ごす二人の生活、シーボルトの元で医学を学ぶ若き医師たち、シーボルトとの娘 稲、禁制の地図の持ち出しが発覚し日本を去るシーボルト、その後のお滝、稲の四国への旅立ち。静かな語り口だがそこは吉村氏、上下二巻にもどんどんと読ませてくれる。日本も1970年初めくらいまでは外人と珍しがった。江戸時代にシーボルトとの間に生まれたお稲の心境はどんなものだったのか。今後のお稲はどう生きていくのか、下巻が気になる。図書館本2016/11/11

夜長月🌙@新潮部

89
日本初の女医となったシーボルトの娘、お稲の物語ですがまずは400ページを使ってシーボルトの業績が語られます。シーボルトは西洋医学を日本に広めるため国禁を越える特別措置まで受けてとても貢献しました。その影で実はオランダ人ではないこと、オランダ国王から密命を受けていたことがわかりました。シーボルトは国外追放となるのですが残されたお稲は遊女の子でありしかもハーフであることからこれからの人生の困難が予想されます。また、幕末にあって海外との唯一の窓口である長崎・出島での見聞は開国か攘夷かに揺れる世情の写し鏡でした。2020/08/19

ケイ

64
700ページの大半は、シーボルトとその相手の遊女其扇の出会いや暮らしで、娘の稲が成長してからの話は最後の方からだ。シーボルトは医学を伝えてくれた人のような印象を持っていたが、ここに描かれた通りだとすると、自分の行為が他人に与えた迷惑を慮りもしない、身勝手人だ。なぜドイツ人のシーボルトがオランダ人として日本にくることになったかの説明がもっと欲しかった。2014/01/18

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