内容説明
商社マンとして生き抜くことを宿命と感じるようになった壹岐は、防衛庁の次期戦闘機選定に伴う商社、メーカーの熾烈な受注合戦に巻き込まれる。国防のため、真に優れた機を採用させようと奔走するが、背後には次期総裁選をめぐる暗闘が横たわっていた。壹岐は政界や防衛庁内の利害が複雑に絡み合う「黒い商戦」で水際立った手腕を発揮する。しかし、その代償もまた大きかった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
koba
124
★★★★☆2015/05/10
優希
97
商社色が強くなってきたように感じました。政界や防衛庁を巻き込み、苛烈な商戦が見られます。シベリアから帰還した壹岐の第二の人生は商社マンという道でした。商社マンとしての手腕は見事ながらも、その変貌と適応力が薄気味悪く感じます。元参謀で国防に強いことで巻き込まれる次期戦闘機選定。ドロドロした商戦が凄まじいです。陰謀が渦巻く世界に手に汗握りますね。2016/02/11
ちびbookworm
68
イキは近畿商事入社後、慣れない中、防衛庁の次期戦闘機の受注合戦の中に巻き込まれていく。ライバル商社の東京商事の鮫島という狙った獲物を逃さない好敵手も登場。防衛庁官僚、政治家、他社や自社の人間とのドロドロの泥試合◆商社マンとして生きることを第二の人生と覚悟したイキは、(かつての陸軍エリート参謀という)自身の”誇り”を削りながらも、自社の生き残りを賭けて、長所である知謀知略を尽くすようになる。◆競合他社、社内の派閥や人間関係が絡まる中で、人間の内面のえぐさ(会社員のやるせなさみたいな所も)が炙り出されていく。2024/09/21
reo
66
2017年4月7日アサド政権が民間人に化学兵器を使用したとして、4月12日トランプ政権はシリアにトマホーク59発を撃ち込んだ。シリア内戦だけでなく、いわゆるパレスチナ問題で中東は世界で最も不安定な地域です。その引き金になったのが第一次から第四次の中東戦争です。この本で主題となっている中東戦争は1967年の第三次中東戦争のことで、別名6日間戦争という。1973年10月に第四次中東戦争が勃発するが、このとき日本ではオイルショックといわれ、トイレットペーパーなどが市場から姿を消したのは有名な出来事でした。三巻へ2017/04/29
TATA
60
次期戦闘機の契約は勝ち取ったものの、旧友を失い苦い勝利となる。そして舞台は中東戦争、スエズ運河封鎖にかかるタンカー確保の話に。昼夜を問わず働く商社マンの姿を読むと、城山さんの「官僚たちの夏」でも感じたけれど、国のことを考えるというモチベーションがモーレツに働くことを許容した時代だったのだと隔世の感。山崎さん、さすがに元新聞記者だけあって中東動静の記述は堂に入ったものですね。迫力満点です。2020/08/24