内容説明
拷問、飢餓、強制労働――11年に及ぶ地獄のシベリア抑留から生還した壹岐正は、第2の人生を商社マンとして生きる事を決意する。「商戦」という新たな戦いに身を投じ、戦後日本の高度成長を陰に陽に担った男を活写する、記念碑的長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
koba
119
★★★★☆2015/05/06
優希
100
重厚な物語の幕開けです。満州でソ連に拘留され、シベリア送りになる壹岐。その様子がただただ苦しかったです。極寒の中、飢餓と強制労働させられる様子は残酷極まりないと思いました。11年という時間はあまりに大きく、その想像できない実態にただ呆然とするばかりです。しんどい描写が続きますが、読ませる圧倒的力は流石です。2巻以降も読みます。 2016/02/11
ちびbookworm
99
★4.5.初著者だが読みやすかった。「伊藤忠」読んで、戦後の伊藤忠の組織化に尽力した、元職業軍人の瀬島さんがモデルだと知り読んだ。また8月の戦争系読書として、シベリア抑留について知りたいと思い読んでみた◆1巻は、元大本営の参謀の壹岐正が終戦11年後にして帰還後、近畿商事の社長の熱心な誘いを受け、商社に採用が決まった。過去の回想としてシベリアの日々が綴られる◆壮絶だった。ラーゲリ(強制労働所)も種類、ランクもあることも知った。 2024/08/30
zero1
94
前に読んだ作品を登録。大本営参謀が終戦後、シベリアへ抑留。帰国して商社マンに。モデルは瀬島龍三。あさま山荘事件で赤軍と対決した佐々淳行氏は彼のことをソ連のスパイと見ていた。
びす男
77
大本営参謀として終戦を迎え、ソ連の抑留を生き延びた主人公・壱岐正。帰還後に彼が身を投じたのは、日本経済を支える「商社」という新たな戦場だった■「企業には潔い玉砕なんか許されんのや」。第二の人生と呼ぶには、いささか過酷。年下の社員に教えを請い、商社の水になじもうとする壱岐の姿が印象的だった■もっとも、山埼の小説がそこで終わるはずがない。政治・社会的な伏線が所々に張られているのを感じる■軍事戦争から商売、貿易の戦争へ――。戦後日本史そのものを、著者は真っ向から作品にしようとしている。その度量に感嘆するばかり。2018/09/05