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内容説明
敵軍,モスクワ侵攻!退去勧告のビラが撒かれる.引揚げるナターシャは重傷のアンドレイと再会し,ゆるしを乞い,死の日まで付添う.一方,ナポレオン暗殺を誓い大火の首都をさまようピエールは,放火の嫌疑でフランス軍の捕虜となり農民プラトンと出会う.その邂逅にロシア的生命の光を垣間見るのだが・・・新訳(全六冊)
目次
目 次
第 三 部(続き)
第 三 篇
コラム30 アレクサンドル一世
コラム31 馬車と橇
コラム32 モスクワのパノラマ
第 四 部
第 一 篇
コラム33 モスクワ大火
第 二 篇
コラム34 トルストイと老子
コラム35 ロシアの冬
『戦争と平和』年表
1 ~ 1件/全1件
- 評価
さかいの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
104
人間関係が収まるところに収まっていく気配が出てきて、そちらに気を揉まない分、戦争のシーンに集中して読めた。ただ、トルストイなりの戦局の分析が長すぎて些かハナにつく。なぜ、モスクワの占拠はフランス廃退への序曲となったのか。トルストイは寒さにほとんど触れていないが、他国の者にとってモスクワの寒さがどれほどこたえるかは想像できないのかもしれない。ピエールの、農民プラトンとの出会いがとても印象的な巻。マリアはどうしても好きになれない。ソーニャに幸あれ!2016/06/27
ひろき@巨人の肩
79
前巻に続き本巻でもトルストイの歴史哲学が展開される。「歴史とは全ての人類によって築かれた大河。何人たりとも流れに逆らうことはできない」「大衆の支配者も大衆一人ひとりの欲望の蓄積によって自由を束縛され支配される。」この点をロシア侵攻におけるアレキサンドル1世、皇帝ナポレオンのそれぞれのモスクワ放棄の決断を通して示す。また本巻では、もう一つのテーマ「自由」も語られる。一般的に言われる、精神的自由、経済的自由、身体的自由とは個人の中で相反しており、精神的自由を極限まで高めることが唯一、幸福へとつながっていく。2023/09/07
ベイス
58
捕虜となったピエールが、ロシア農民の「良心」のようなカラターエフと出会い、初めて「自分自身との調和」に気づいていく。アンドレイとナターシャの再会、マリアとニコライの接近など、ストーリーは「美しい方」へと進む。しかしそれらはどこか、引いたタッチで描かれている印象だ。トルストイの主張の軸足は別のところにあるようだ。彼の問題意識の頂点にあるのは「歴史はどうのように作られていくか」。それは英雄や一握りの権力者が作るものではなく、戦争に関わるすべての人々の、生活に根差した「素直な行動」の集合体から成っているのだ。2022/11/01
翔亀
52
全6冊の5冊目。第3部第3-4篇、第4部1-2篇。第4部は第1部と同じくペテルブルクの社交界パーティで幕が上がる。モスクワが占領されている時代になったというのにやっていることは同じ。皮相的なから騒ぎだ。しかしこれは戦場とて同じこと。フランス軍もロシア軍も、歴史家が説くナポレオンやクルトゥーゾフ(ロシア軍総司令官)の天才性も空回り。歴史は英雄でなく、個人という無限小の要素の総和による動く、というトルストイだから、各主人公の個人史が主役。しかしその一人であるアンドレイを動かすのは思想でも意志でも習慣でも↓2016/02/11
ころこ
47
興味深いのは日常と戦争の関係です。モスクワに侵攻してくるフランス軍を尻目にギリギリまで商行為を行ったり、避難の途中で貴族が前の屋敷に忘れ物を取りに行ったりと、ちょうどウクライナで始まった戦闘の後に、そこで生きているひとたちにとって日常の象徴性はそれでも途切れることが無いと知った時の驚きに似ています。統治権力が変わるとモスクワは蜘蛛の子を散らしたように人がいなくなり、以前は価値を置いていたモノが無価値になる。ひとびとはモノに執着をみせていましたが、そこにみているのは単なるモノではなく、人間の生活の形式の象徴2022/04/08