内容説明
『極夜行』後、再び旅する一人と一匹に、いったい何が起こったか。
GPSのない暗黒世界の探検で、日本のノンフィクション界に衝撃を与えた著者の新たなる挑戦!
探検家はなぜ過酷な漂泊行にのぞんだのか。未来予測のない世界を通じ、人間性の始原に迫る新シリーズの第一作です。
「この旅で、私は本当に変わってしまった。覚醒し、物の見方が一変し、私の人格は焼き焦がれるように変状した」
―――本文より
目次
四十三歳の落とし穴
裸の山
狩りを前提とした旅
オールドルート
いい土地の発見
見えない一線
最後の獲物
新しい旅のはじまり
*巻末付録 私の地図
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
93
漆黒の北極圏を行く「極夜行」のあと、今度は地図を持たず食料も狩りをしながら調達するというグリーンランド冒険の旅。狩りをし動物を解体し、犬と内臓をわけあい干し肉を作る。イヌイットではあたりまえの生活も、スーパーで買い物をし時には出来合いのものも…という私の生活では考えられず、その生活能力の高さに感服する。相棒の犬ウヤミリックとのやりとりもニヤリとしてしまう。第二部も楽しみ。2024/02/20
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
77
(2024-28)【図書館本】あの「極夜行」後の角幡氏の冒険。今度のテーマは「狩りと漂泊」。事前に充分な食糧も準備せず、狩猟をして自ら食糧を調達しながら北極圏の旅をする。ずいぶんと無謀な挑戦のようにも思えるが、古来からここで暮らしていたイヌイットにとってはそれが日常の生活であった。とはいえど、氷点下40度にもなる中、飢えに怯えながら旅をする。なかなかできる事ではない。暖房の効いた部屋の中で熱いコーヒーを飲みながらこの本を読む私には想像もつかない世界である。第二部は犬橇旅行。これも楽しみだ。★★★★2024/02/18
pohcho
60
探検家43歳死亡説。43歳を前にした著者が向かったのは北海道の日高山脈。地図を持たずに登る漂白登山だった。手応えを得た著者は今度はグリーンランドに向かう。極夜行をともにした相棒の犬とともに、一人と一匹。ギリギリの食料を元手に、足りない分は狩りで調達する漂白旅が始まる。古くて新しい、今までの探検の概念を覆すような旅の記録。私は地図を持ってても迷子になるし、狩りはもちろん獣を解体することもできないので、著者の生きる力の凄さに圧倒されっ放しだった。新たな方向性を見つけた著者。次作も読む予定なので楽しみ。2023/11/10
みき
32
傍目に見たら、何やってんだこの人?と思われるかもしれないが私は角幡唯介さんの大ファンである。ネタバレもクソもないが北極を歩き思索する。それだけの本である。そこに経済的なメリットもなく(おそらく)学術的な発見も目的もない。ただ著者が探検をしたいと考え、我々が本の購入という形で援助する。著者の思索が何かの役に立つのかと言えば、おそらく立たない。だからこそ素晴らしい。個人的には日本屈指のノンフィクション作家2022/05/18
羊山羊
27
毎度毎度、本が出版されているので生きているのはわかっているが、読み終わるまで本当に死んでないか不安になる著者さん。極夜行の次に角幡氏が挑むのは白夜の中での当てのない放浪だった。放浪の中、狩りという偶然をモノにするために大地と同化しようとする極限状態での思考の変遷がドラマチック。こんな思考の狭間で、飢えと不安と、ウヤミリックとのユーモラスな掛け合いがリーダビリティを加速する。本著中で、一番最初に麝香牛を仕留めたシーンと、飢えの最高峰の中、著者とウヤミリックが兎を奪い合うシーンは心に残る。ノマド哲学の金字塔。2022/06/27