内容説明
一頭の犬と過酷な徒歩狩猟漂泊行にのぞんだとき、探検家の人生は一変し、新たな<事態>が立ち上がった(『裸の大地 第一部 狩りと漂泊』)。百年前の狩人のように土地を信頼し、犬橇を操り、獲物をとりながらどこまでも自在に旅すること。そのための悪戦苦闘が始まる。橇がふっ飛んで来た初操縦の瞬間。あり得ない場所での雪崩。犬たちの暴走と政治闘争。そんな中、コロナ禍は極北の地も例外ではなく、意外な形で著者の前に立ちはだかるのだった。裸の大地を深く知り、人間性の始原に迫る旅は、さまざまな自然と世界の出来事にもまれ、それまでとは大きく異なる様相を見せていく……。
<目次>
泥沼のような日々
橇作り
犬たちの三国志
暴走をくりかえす犬、それを止められない私
海豹狩り
新先導犬ウヤガン
ヌッホア探検記
「チーム・ウヤミリック」の崩壊
*巻末付録 私の地図[更新版]
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
95
「裸の大地」第二部。グリーンランド北部北極圏での犬橇漂泊行。まず現地でイヌイットから犬を買い集め、飼い慣らしそれぞれの適正に合った位置取りを決める。そこまでに四苦八苦。極夜行からの相棒犬ウヤミリックの他10匹の犬たち。悪戦苦闘し言うことを聞かない犬たちに振り回され悪態をつく著者はユーモラスでありながら生死を分ける地であることに冷や汗が出る。イヌイットにとって犬は愛玩動物ではなく労働犬。老いたり用をなさない犬は処分する。著者もその時がくる。自らの手で、絞殺して見届ける。それが飼い主の責任。第一部より興味深い2024/03/29
pohcho
60
自力で橇を引く旅をしてきた角幡さんが今作では犬橇に挑戦。現地民から犬を買い集め(当然いい犬はゆずってもらえない)十二頭の犬との悪戦苦闘の日々。犬橇は優雅なイメージだが実際にやるのは本当に大変そう・・。その上にコロナもあって不運だった(無人地帯を旅するんだから別に問題なさそうだけど、当時の空気を考えたら仕方なかったかと)。いろいろあったけど犬橇もなんとか形になり、個性豊かな犬たちとの旅は続く・・のかと思っていたら、衝撃的な結末が。愛犬家はつらく読めないかも。でも、これもまた現実なんだと思う(涙・・)。2023/12/13
みき
44
相変わらず真っ直ぐに狂っている(笑)おそらく本人は大真面目。傍から見たら「この人は何をしているのか?」と疑問にしか思われないだろう。冒険を脱システムとし漂泊を是とする角幡さんが犬橇を引いてエスキモーの伝統に組み込まれていく様は、厳密に言うと脱システムという点からはどうなんだろうと疑問に思わなくはない。しかし著者が犬橇に引き込まれ、犬と心を通わせ、氷原を踏破していく様を想像するとそんな疑問は吹き飛んでしまう。そして長年の相棒や先導犬を亡くした著者が今後、どう犬橇と向き合っていくか今から楽しみです2023/08/09
Toshi
22
「裸の大地」第二部では、第一部で描いた妄想をいよいよ現実のものへ。著者の言葉を借りると、犬橇行は目標地点を目指す旅ではなく、犬たちと共に綴る物語だと。そのとおり、本書は犬チームの組成、橇作り、訓練、そして遠征と進んでいく。また著者曰く、多くの人が持つ犬橇についての誤った固定観念は、「かわいい犬が尻尾をふりながら、力をあわせて元気に雪原を駆け抜けるいうひたすら前向きなイメージ」だと。私も本書を読む前はそう思っていて、都会でペットと暮らす者の甘っちょろい動物愛護観は仕置き棒でぶん殴られるのである。2024/01/06
やっちゃん
16
今回は犬。冒険というより犬。自分の命を預けられるほどの信頼関係が必要で、ペットのようにただ可愛がる関係とは全く違う。犬との、また犬同士の関係も人間と変わらないんだなと興味深く読めた。土地と調和した冒険は原始人らしくて美しいと思う。写真と地図がついててこれも良かった。2023/10/09