内容説明
狂躁の季節が来た。長州藩はすでに過激派の高杉晋作をすら乗り越え、藩ぐるみで暴走を重ねてゆく。元治元(1864)年七月に京へ武力乱入するが会津藩勢らに敗北、八月には英仏米蘭の四カ国艦隊と戦い惨敗……そして反動がくる。幕府は長州征伐を決意し、その重圧で藩には佐幕政権が成立する。が、高杉は屈せず、密かに反撃の機会を窺っていた。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゴンゾウ@新潮部
114
蛤御門の変から朝敵とされ、長州征伐、四カ国艦隊との戦い。長州の苦難が続くたびに表舞台に引きずり出される高杉晋作。彼の思想が先を行き過ぎ長州を追われてしまう。逃避の中で改めて長州から革命を起こさねば国を守ることができないことに気づく。藩主をこよなく敬いながらも長州を滅ぼさずして日本は守れないと考えた天才革命家。まだまだ目が離せない。2018/11/18
やっちゃん
107
うーん。ここまでの高杉晋作は見せ場が講和会議くらい。気まぐれで藩の身分に甘えた部分も多い風俗好きな男。よほど井上聞多の方が‥ここからの活躍に期待。2023/11/30
金吾
104
○激動する長州藩が伝わります。内部抗争は激化していくと陰惨な話になりますが、この当時の長州藩にもこれが当てはまると思いました。高杉晋作の下関談判の部分と井上馨の活躍部分は好きな場面です。2022/10/14
優希
101
高杉さんは時代の寵児としか言えないでしょう。かなり過激に動こうとする姿が伺えます。それを飲み込むように、長州藩の暴走も激しいものがありますが。長州征伐を企み始めた幕府、重圧で生じた佐幕政権。しかし、高杉さんはそれに屈しないのですね。己の意思を貫こうとしているようです。2018/11/15
夜間飛行
93
晋作は松陰の狂を継ごうとしている。御殿山を焼き討ちし、師の遺骨を持って将軍専用の橋を押し渡り、「わけは家茂に聞け」と言い放った。何よりも凄いのは、身分に囚われない奇兵隊を作ったこと。そんな晋作の周囲に伝染性の狂があふれていく。攘夷攘夷と喚いて世界相手に戦争を仕掛ける狂もあれば、毛利敬親のように底抜けのお人好しという狂もある。松陰の感化力が、長州人の体質的な狂を呼び覚ましたのだろうか。けれども松陰から晋作へと伝わった狂は、それらとはどこか違う。晋作は亡き師の狂に応えるかのように、覚めた実践者として行動する。2013/09/11