内容説明
2015年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』の主人公は久坂玄瑞の妻、文(ふみ)。文の兄であり玄瑞の師である吉田松陰こそ、『世に棲む日日』前半の中心人物です。「人間が人間に影響をあたえるということは、人間のどういう部分によるものかを、松陰において考えてみたかった。そして後半は、影響の受け手のひとりである高杉晋作という若者について書いた」(「文庫版あとがき」より)
嘉永六(1853)年、ペリー率いる黒船が浦賀沖に姿を現して以来、攘夷か開国か、勤王か佐幕かをめぐり、国内には激しい政治闘争の嵐が吹き荒れていた。この時期、骨肉の抗争を経て倒幕への主動力となった長州藩には、その思想的原点に立つ松下村塾主宰・吉田松陰と、後継者たる高杉晋作がいた――。維新前夜の青春群像を活写した怒濤の歴史長編、ここに開幕。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
191
吉田松陰から高杉晋作へと続く尊皇攘夷・倒幕への流れを丹念に描いた作品。彼らの視野の広さが幕末の過激なまでの尊皇攘夷を破滅から 救ったような気がする。2010/07/31
ゴンゾウ@新潮部
119
長州藩の志士達に多大な影響を与えた吉田松蔭。まだまだ序盤、西洋列強の来襲を憂い諸国を巡る旅を続ける。ペリーの黒船がありいよいよ憂いが現実のものになる。倒幕の原動力となった思想家がいよいよ動き出す。2018/11/17
thee birdmen
116
時代背景の描写が多くて松陰の人格形成の過程がしっかりと伝わってきます。学者を純粋培養しようとする長州藩と、混じりけなしに真っ直ぐ学問と向き合う松陰。そして国を揺るがすペリー来航。まるで仕組まれたようなシナリオ。。。面白くないわけがないです。2016/02/05
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
115
最近大河ドラマに合わせて司馬遼太郎を読んでいる気がします。昨年は「播磨灘物語」そして今年はこの「世に棲む日日」。幕末の長州の思想を築いた吉田松陰、そしてその思いを引き継いだ高杉晋作の物語。とはいえ、冒頭で「長州の人間のことを書きたいと思う」と言ったように、この二人を軸に長州藩がなぜ討幕の主役となりえたのかがつづられてゆくのであろう。第一巻のクライマックスは黒船襲来。松陰の思想に大きな影響を与える事件。さてさて次は・・・。2015/04/17
yoshida
112
幕末の長州藩を吉田松陰、高杉晋作を軸に描く。1巻は吉田松陰の生い立ちから脱藩、ペリーの砲艦外交による日本の危機まで。吉田松陰の純粋さ、思い立ってからの行動の早さはやはり驚く。司馬遼太郎作品なので記録文学ではなくエンタメ作品。割りきって楽しく読む。2014/11/24