内容説明
薩軍は各地を転戦の末、鹿児島へ戻った。城山に立て籠る兵は三百余人。包囲する七万の政府軍は九月二十四日払暁、総攻撃を開始する。午前七時すぎ、西郷隆盛は二発の小銃弾を体に受ける。一度倒れ、起き上がった西郷は、薩軍幹部・別府晋介をかえりみて言った。「晋ドン――」。そしてその翌年、大久保利通もまた――。激動の時代、ここに終熄。『翔ぶが如く』完結巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やっちゃん
99
山好きとしては延岡からの山岳縦走逃避行をあっさり終わらせたのは寂しい。他はクソ細かいのに。ここだけで一冊使ってほしかった。この道は自分で歩いてみたくなりますね。最後を川路利良で締めるとは綺麗な終わり。この最終巻が一番面白かったな。2024/02/29
優希
97
西南戦争も終焉を迎えます。激動の時代が終わったと言えるでしょう。西郷どんに続くように死を遂げる薩軍幹部たち。1つの時代が滅んでいく様子を見ているようでした。何事にも時がある中で、流れるように生きた西郷どん。西郷どんと関わった人たち。今の日本の基盤をきずいた物語とも言えますね。2019/01/25
かしこ
78
ようやく最終巻まで読み終わりました。長かった・・・。全巻通して思うことではありますが、なんだか西郷像がいまいち掴めませんでした。謎の男です。でも、何か魅力があったんですよね。西南戦争の起因の一つとして、それが挙げられるのではないかなと本書を通して思いました。そして、司馬さんの作品はいずれもそうですが、 「日本人」とは何かという点を考えさせられるということです。国について、この当時の若者ほど考えたりすることはありません。愛国とかそういうものとは違う意味で国について考えることは必要なことなのでしょう。難しい。2015/01/23
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
78
開戦から半年、敗走を続ける薩摩軍も最後は鹿児島へ。わずか300人の薩摩兵に対して取り囲む政府軍は7万。もはや戦争ではなく虐殺である。長い物語もついに終わりを遂げた。司馬の筆力をもってしても、これだけの枚数を費やしながらこの戦争で西郷が何を考え、どこに行こうとしていたのかが描かれていないように思える。西郷が意識的に自分の考えを封じていたからであろう。征韓論に敗れた時点で彼の政治への想いは終わったのかもしれない。西南戦争も終結し、やがて大久保も暗殺される、10年にわたる「明治革命」も終わりを告げた。★★★2013/06/29
aqua_33
65
西南戦争もほぼ勝敗はつき、本巻は薩軍の散り際を切々と語る。9巻では薩軍幹部に憤慨していた私ですが、さすがに桐野や辺見が倒されても「ざまあみろ」とは思わず、ただひたすら虚しい読後感。歴史に「たられば」は意味ないけど、せめて薩軍が戦略とその後の展望を持っていたなら…と思わずにはいられない。一体何のための戦争だったのか。西郷が、大久保が、川路が倒れ、せめて次世代へと続く礎となっていてくれればと願う。《2018年45冊目》2018/03/03