内容説明
香冶完四郎。旗本の次男でお玉が池の千葉道場の目録まで進んでいる。しかし、今は竹光を腰に古本屋「藤由」の居候だ。藤由こと藤岡屋由蔵は「広目屋」もやっている。巷の噂を売り買いする、今で言えば広告代理店。完四郎と藤由が組んで幕末の江戸の噂や怪事を解いていく。文を書くのは仮名垣魯文。絵を描くのは浮世絵師・一恵斎芳幾。変格捕物帖の新シリーズ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Susumu Kobayashi
8
香冶(こうや)完四郎シリーズ第一弾。時はペリーが浦賀に来港した直後、世情騒然とした時代。完四郎は奥祐筆の伯父を持ち、剣の腕前も卓越しているが、武士に見切りをつけ、携帯する剣も竹光である。現在は古本屋兼広目屋で、瓦版を売る藤岡屋由蔵の店の居候をしている。「広目屋」とは巷の噂を売り買いする、現代の広告代理店みたいなもの。本書は12編の短篇から成る連作短篇集。「かぐや御殿」や「首なし武者」などで完四郎はなかなかの推理力を見せる。完四郎の相棒に、仮名垣魯文が登場。読みやすいのでこのシリーズも読んでしまいそう。2020/05/27
Radwynn
7
集英社文庫『短編復活』に収録されていた「梅試合」を読んで気になっていた香冶完四郎シリーズ。歴史上に実在する人物の若き日の姿も交えつつ、江戸のそこかしこに起こるちょっと不思議な噺を紐解く— 頭も剣も冴えるが平素はいたってのほほん、って完四郎さんがいいねえw 右門捕物帳のむっつり右門さんもそうだったけど、こういう人種は食べ物で釣るのが定番なのかw 舞台は江戸から明治への激動期、ではあるのだけれど、いまだお江戸は華の賑わい、粋なお噺が、多うござんす。先に読んだ『いじん幽霊』よりこっちの方が好きだった。2015/04/29
ryohey_novels
6
広目屋・藤岡屋由蔵に居候する武士・香冶完四郎の謎解き短編。1篇30頁程度で非常にテンポ良く読みやすい。魯文や芳幾を始め実在の人物を交えたバラエティ溢れるストーリーが魅力的。高橋氏らしい怪談関連が多く、虚実の狭間を突く今回のような物語は非常に良い。魯文の下っ端感と由蔵の面倒見の良さ、完四郎の飄々としつつも誠実な優しさが綺麗に混ざり合い、心地よい雰囲気を醸し出す。最後の安政の大地震はショックな事件だが、被害者よりも復興や正常化に向けて奮闘するメディアの意義に焦点が当てた非常に示唆に富んだ短編になっている。2025/07/06
西澤 隆
6
NHKラジオ文芸館の朗読で聞いた「梅試合」に「江戸時代に『ビラ』?」と思ったのがきっかけで読み始める。ビラって外来語じゃなくて日本語なんですねえ。勉強になりました。というわけで眠ったような日々を生きる才気溢れる人たちの物語は、だけどラノベなどにありがちな「無敵を振り回す」安易さもなく淡々と、しかしちゃんと展開するちょうどよさ。冒頭の「梅試合」のような酔狂を楽しむひとがたくさんいる「江戸」というまち。梅一本一本に触発された「句や川柳のコンペ」に生活に困るような人たちも参戦してくるこの感じに憧れてしまいます。2023/04/21
timeturner
6
「広目屋」というのは広告代理店みたいなものだが、怠け者の完四郎やお調子者の仮名垣魯文が社員(?)なのでブラック企業にはならない。発想源となった広重の浮世絵が華を添えていて藤沢周平の『日暮れ竹河岸』を思い出した。2021/01/04




