内容説明
完さんが日本に帰ってきた! 明治の政府になって早7年。江戸の広告代理店、広目屋「藤由」の居候から、アメリカでのジャーナリズム体験をひっさげ、今度は東京日日新聞の居候となった香冶完四郎。人気の新聞錦絵をひと目みるなり、不審の数々を暴き出す推理の冴えは昔のまま。免許皆伝の剣をステッキに替え、いまや売れっ子戯作者となった仮名垣魯文らと事件の真相を探る。人気シリーズ第4弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おひゃべりのナオ@【花飛】ヤオイは三月の異名にあらず
32
正直言って風太郎先生の明治物の二番煎じ。筋立ても登場人物も山田明治が上。魯文さんを通して、相変わらず食べ物へのこだわりがあるが、カレーや豚カツと違って鰻は店屋を選ぶ。高橋センセも月に一度の口とお見受けした。2016/02/07
Susumu Kobayashi
6
完四郎シリーズ4冊目の連作短篇集で、12編収録。アメリカに七年滞在した完四郎が帰国してから遭遇する様々な事件が描かれている。いずれも高水準で、とりわけ心理的密室トリックの「手口」に感心した。元武士で、今では茶の栽培に取り組んでいる中條が「それになにより茶の栽培が面白くなってきた。どうしても形にしたい」と言えば、完四郎が「それが大事です。剣と一緒ですね。稽古がつらいうちはなにも身に付いていない。面白くなってはじめてなにかを得たと知る」と応じる(p. 298)。これはすべてに通じると思う。いいシリーズだなあ。2020/06/20
あいちょ。
5
図書館。 完四郎4作目。 2023/12/21
timeturner
5
薩長土肥以外は人でないと言われる世の中で明治政府は西洋化に邁進し、元幕臣たちは貧窮にあえぎ不満をつのらせている。政府の締め付けが厳しくなる中で新聞のあるべき姿を追求する完四郎の動きが頼もしく読み応えのある巻だった。「瓦版が新聞に変わったように、奉行所も警察となった。新しい時代の先に立つのは新聞と警察だ。新聞と警察がなににも染まらず公正であることでこの国が勇気や希望を取り戻す」今のジャーナリズムや検察にもこう言いたい。2021/02/18
紫
3
『完四郎広目手控』シリーズ4巻目。前巻「いじん幽霊」は幕末の横浜が舞台で、アメリカへ渡らないかと香冶完四郎が誘われる場面で終わっていたのですが、本巻はすでに明治の御時世でして、七年ぶりにアメリカから完四郎が帰ってきたエピソードからスタート。明治維新の一番大事なところが豪快にすっ飛ばされていて、途中の巻をうっかり見落としたかと焦らされたのであります。それとも別のところで発表済みだったの? 完四郎たちの目から見た明治維新や、完四郎が渡米するエピソードを読みたかったなあ…。星4つ。2021/07/13