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内容説明
アサンガ(無着)やヴァスバンドゥ(世親)によって体系化の緒につき、日本仏教の出発点ともなった「唯識」。仏教思想のもっとも成熟した姿とされ、ヨーガとも深い関わりをもつ唯識思想の本質を浮き彫りにする。
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
目次
第1部 瑜伽行としての哲学(唯識派の歴史と源流 実在論と唯識思想 識の変化 輪廻的存在の超越)
第2部 唯識論と空の思想―対談(服部正明 上山春平)
第3部 大乗の実践哲学(唯識思想の前提 唯識思想の特質 唯識と華厳 三性と十地 十地と五位 三性の論理と弁証法)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
no.ma
18
インド仏教思想のクライマックスである「唯識」。何とも不可思議で魅力的な思想です。外界に存在すると思われるものも、心が生み出した表象にすぎない。外界の物質的存在が心に映写されて表象が形成されるのではなく、心がみずから表象を生み出す。直感として、これは正しいのではないかとも思います。アーラヤ識が輪廻のビークルというのは違和感がありますが。私がこのシリーズを読みたいと思ったのはこの唯識がきっかけです。アビダルマ、中観を経て漸くたどり着きました。そして唯識を真に理解するには、瑜伽行の実践が必要だと分かりました。2021/10/16
takeapple
16
唯識についての本。ここまでがインド仏教篇。唯識は、瑜伽行派というのがある程実践と理論ぼ両輪よりなっているということで、瑜伽行はヨガのこと、仏教でのヨガは苦行より瞑想ということなので、禅の系譜なのだろう。唯識とは古来日本では法相宗で研究されてきたのであるから法隆寺にでも行ってみようかなあ。唯識とは世の全ては識による、実態はないよということで良いのかな?それにしてもインド仏教は、救済というより認識論の趣が強いなあ。2020/07/12
俊介
11
「仏教の思想」シリーズ、本書は「唯識」。やはり難しかった。。ただ、読み進めながら、なんとなく抱いていた唯識のイメージとは違うなと感じたのだが、それにも理由があったようだ。著者によると、唯識思想には歴史的に2つの派があって、非常に精緻な理論を作り上げた哲学色の強い系と、「空」を重んじ、涅槃に至る実践を重んじた宗教色の強い系。日本には哲学系の唯識が「法相宗」として入ってきたので、恐らく日本人がイメージする唯識は、そっちの方のものなのだ。本書の著者は、宗教としての唯識にこだわり、論を進めていたように思った。2019/10/24
まえぞう
9
アビダルマの否定から生れた中観の空の概念をベースに、あらゆるものに自性がないことを肯定的にとらえ直したものが唯識になるのでしょうか?もともとは業による輪廻から解脱するための思索のはずなのに、逆に業にとらわれてしまいそうです。2018/12/19
roughfractus02
8
唯識は、全てが存在するという説一切有部中心のアビダルマ的存在論と、全てを空とする中観の認識批判を統合した、とされる。全ては識であり、識(非実在の仮構)でできた世界は汚れている。ゆえに、感官で仮構された外界を静め(止)、それに対応する内界も空と見(観)ることが重視される(止観)。唯識は瞑想を導入し、個を超えたアラヤ識の原理を設定しつつもアラヤ識自体も瞑想によって無化する理論かつ実践の体系を築いた。中国仏教の崩壊の危機に面した玄奘がインドに赴いた目的は、唯識の瞑想実践を学びその経典を持ち帰ることだったという。2021/04/27