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内容説明
六世紀中国における仏教哲学の頂点、天台教学。法然・道元・日蓮・親鸞など鎌倉仏教の創始者たちは、最澄が開宗した日本天台に発する。豊かな宇宙観を湛える、天台教学の哲理と日本の天台本覚思想を解明する。
※本作品は紙版の書籍から口絵または挿絵の一部が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
目次
第1部 天台法華の哲理(天台思想の歴史 天台思想の骨組み 天台思想の展開)
第2部 天台法華思想の系譜
第3部 三国伝来の仏教(インドの劇詩 中国の思弁哲学 日本の内面道徳)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
56
『法華経』を根本経典として成立し、日本にも大きな影響を与えた天台思想についての本。興味深かったのはその思想史で、天台哲学は「普遍的真理」からは排除される特殊なるもの・具体的現実を重視するのですが、その現実の生死・善悪などの相対・対立を見失うと悪即ち善と肯定することとなり、真理を重視すると今度は理想に心酔した観念的なものに堕してしまう。「現実変革」の動力となる真理とは、どちらにも傾かず両者を対立・止揚するものだと思うのですが、そのバランスが崩れて新たな運動が起きるという流れはその均衡の難しさを思わせました。2021/08/24
no.ma
14
天台は、インドの大乗仏教の経典『法華経』に天台智顗による哲学的思弁を加え、最澄によって日本仏教の基礎とされました。天台本覚思想の絶対的一元論は、すべてのものの中に仏性を見ます。多種多様な事象が生起・変滅する現実のすがたこそは、永遠・普遍な真理の生成躍動のすがたであり、そこにこそ、ほんとうの生きた真理があるとします。積極的な現生肯定の思想は、日本の仏教諸宗だけでなく、一般思想や神道理論、文芸にも大きな影響を与えることになります。2021/11/17
takeapple
10
当時中国では、時代遅れで傍流だった「天台宗」が最澄によって、最新のものとして日本にもたらされた。そこから日本仏教は生まれた。その元が法華経である。法華経はインドで釈迦が死んだずっと後に作られたもので、大乗仏教的な集大成である。最澄は、経典だけでなく、戒律についても、当時の南都六宗批判から独自のものを作った。それは、当時の堕落した南都六宗の僧侶の実態からは、宗教的には正しい在り方だったけれど、後の日本的な天台本覚思想によってガラパゴス化したということかな。 それにしても梅原猛の浅さって何なんだ?2022/06/28
roughfractus02
8
インドから中国を経て日本に至る仏教の流れを掴むには、インドの『法華経』を中国で独自解釈して発展し、最澄が日本に伝えた天台がふさわしいと著者達はいう。その特徴は世界の詳細なカテゴリー化だ。世界はインド六道思想(地獄等)に悟り状態を4つ加えた十界(十界)が各々十界を具える十界互具の百世界であり、それらは世界の構成素の三世間(物質・人間・環境)と組み合わせて三千世界を成す。人の一念に三千世界が込められるとする一念三千の思想を核とした天台は、中観の空・仮・中の論理と止観の瞑想実践を重視する。ここから禅が生まれる。2021/04/28
とんこつ
7
中国での天台思想の発展を中心に、インドで生まれた仏教が中国を経由し日本に到達するまでの足跡を追った一冊。第一部では天台の生い立ちを辿りながら、南北朝時代から隋までの不安定な時代背景のなかで天台思想(法華経)が中国の土着にどのように根付いていったのかを辿る(それは華厳宗や、山家派と山外派との論争のなかでの対立的融合であると本書では説明される)。特に法華経というインドで生まれた壮大なスケールで語られる詩的仏典が、中国では徹底的に哲学体系化されたという指摘は、インドと中国らしさをよく表しているように感じられた。2017/06/07