感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひつまぶし
3
研究の中で自分について語るのは、そうでなければ提起できない議論があるからでなければならない。またそれは分析枠組みを提示し、客観性を担保するために必要な手続きでもある。そういう意味では第4章、第5章、第7章、第8章はフィールドとの関わりで切り離せない個人的な事情が丁寧に記述されていて面白かった。しかし、本書での「オートエスノグラフィー」はポジショナリティを議論するための方法にすぎない。それならわざわざオートエスノグラフィーと銘打つ必然性はないし、そうしなければこういう議論ができないなら、それも問題だろう。2024/04/29
文狸
2
複数のポジショナリティを抱えて人類学するというのは私にとって関心事であったため読んだ。ただあまり自分の研究に資するところがあったかというとそうではなかった。複数のポジショナリティがあり、人類学的な自己がreflectitionにつながること、そのほかの自己と衝突することによる葛藤があること、は描けているが、だから何なのかとか、どうしたらいいとか、実践はどのようなものになるのかとか、もう一歩先の話がなかったように思う。ナイーヴな自分語りの域をどこまで脱していられたかどうか。2024/10/25