内容説明
戦中の『暗黒日記』の著者清沢洌は、軍国主義に抗した戦前期日本を代表する言論人である。三木清や戸坂潤らとの「自由主義」論争など、その思想と行動を昭和思想史の視角から解明する。
目次
序章 「社会民主主義」者としての清沢洌
第1章 思想形成
第2章 日本社会の民主化論と国際協調論―イギリスをモデルとして
第3章 欧米旅行の「経験」
第4章 昭和期「自由主義」論争への参加
第5章 日中戦争下の「自由主義」と同時代批判
第6章 『戦争日記』にみる戦時下日本批判と戦後構想
終章 いかなる意味で「自由主義」者だったのか?
著者等紹介
佐久間俊明[サクマトシアキ]
1981年東京都生まれ。公文国際学園高等部卒業、明治大学文学部史学地理学科卒業、明治大学大学院文学研究科史学専攻博士前期課程修了、総合研究大学院大学文化科学研究科日本歴史研究専攻博士後期課程修了。博士(文学)。現在、穎明館中学高等学校教諭(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
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きよし氏。私より10歳年下の学位論文を加筆修正(357頁)した労作。戦前日本を代表する自由主義的言論人(2頁)。自由主義者と自由主義の双方の架橋を果たす研究を志向(14頁)。研成義塾創設の井口喜源治は、穂高組等々力町村に生れた(21頁)。義塾は英語、道話、儒教重視(23頁)。清沢によると、日本人は動かない国民。理由は家族主義で、日本社会は家の組織している社会とした(39頁)。官僚主義は、人間として先づ自覚せねばならぬ個性を服従と云ふものゝ脚下に葬り去る事。創造的文明を造らないとした(40頁)。2016/05/25
省事
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ジャーナリスト、評論家として大正期から昭和戦前期に活躍した清沢洌の著作論説から、その思想を考察した研究。①戦後平和主義の先駆者、②戦後保守に通じるものを持つ自由主義者、③大衆蔑視・帝国主義的要素を依然帯びた人物、などいくつかの評価が一巡した清沢について、全般的な知的態度として「心構えとしての自由主義」を標榜し、具体的な内政面では英国労働党をモデルとする「社会民主主義」を唱える人物であったとの解釈を打ち出す。2017/08/09