内容説明
毒親との生活。はじめての恋。AVデビューと引退。「あたたかい地獄」からの帰還を描く初の私小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
めがねまる
11
かなり時間をかけて読んだので途中のエピソードを忘れているところがあるかもしれないが、具体的なエピソードと、それを著者の目を通して見た景色の描写の割合は後者のほうが多く感じ、そのせいか映像を見ているような印象が残った。泣き出す一歩手前の胸の奥をきゅっと掴まれたような切なさが読後残った。他の小説も読みたいし映画も観たいと思った。2024/06/01
タカナとダイアローグ
8
「家庭環境が不遇だったから、感性が豊かで創造的なんですか?」という旨のインタビューに対し、真っ向から反対していた映像が印象的だったことから興味をもち、Spotifyを聴いて、最新の著書を購入。考えてみれば当たり前に、制約・暴力(肉体的・精神的)に怯えていると創造どころじゃない。AV現場は優しい嘘の世界、官能的で下品に魅せるための思いやりと清潔さが必要な場所だった様子で、丁寧に語られている(私小説)自分の手紙が歌になったときの心境、向き合い方に葛藤。本当嘘、清浄汚濁、二項対立で説明できることは無いと思う。2023/06/27
まさや
3
おもしろかったです。 人はそれぞれが、自分が物語の主人公であり、自分自身に最も関心を持っています。その前提を忘れて、他人が自分に興味を持っていると思い込む側にいってしまうと、不幸が始まります。それが幸せだと感じることもあるでしょうけど。2024/05/12
yuko0611
3
貧困なわけでも暴力を振るわれるわけでもないが心を破壊してくる家庭環境がリアル。環境に対応したらこうなっただけ、と『黄色い家』を読んだ時に近い印象を受けた。水のように流れていった主人公と、身動きが取れなくなったお姉さんとなら、お姉さんの方がより救いがない気もする。よく分からないところもあったが、本人も、100個くらい理由がある、と書いているように、単純化できる話ではないのだと思う。手紙の内容を勝手に曲にされた時の心情描写は胸が痛かった。2024/07/01
は
2
最近、自分に対してものすごく劣等感を感じ、なんなんだこの人生はと思うことがあるのだが、戸田真琴氏も、似た感情を抱くことがあるのだろうか、と。文章が美しくてすごく良い本でした。人生、短編の足し算のように思えることが多々あるのだが、いくら独立していると思っていてもどこかで複雑に絡み合っているということに、後から気付かされるんだよな。何の話って感じだが。2023/07/23