内容説明
近代兵器が登場するまで、日本の武器の主流は刀だと誤信している人が多い。しかし中世の戦においては弓矢が主な武器で、鎧や兜はそれへの備えを第一に作られていた。豊富な実物調査をもとに源平合戦の具体像を読み解く。
目次
日本の武器の実像―序にかえて
日本中世の武器と武具(武器・武具の種類;防御具 ほか)
治承・寿永期以前の弓箭と刀剣(源宛と平良文の合戦;さまざまな合戦 ほか)
治承・寿永期の弓箭と刀剣(治承・寿永期の戦闘研究の現状;真光故実の再検討 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toska
22
美術品や工芸品ではなく、純粋な実用品(=戦いの道具)として日本の伝統的な武具を検証する。無闇に面白い。鎌倉時代までの武士は戦闘の際も結髪したままで、兜の天辺には髻を出すための大きな穴があった。当然ここには矢が飛び込むかもしれず、また組み討ちの際には手をかけて引き倒される危険な代物だった。だが南北朝の頃にはざんばら髪で兜をかぶるようになり、穴も小さくなった。だから、いわゆる落ち武者ヘアはそれ以降の存在ということになる…こんな「常識」も、今までちっとも知らなかった。2025/02/01
kk
17
源平合戦の頃の合戦戦闘の実態を、当時の武器の実態や使用例などに着目しながら考察。特に、弓矢・太刀・刀の関係を、騎馬戦か徒歩戦かといった視点も交えながら論じていく。著者の提唱する「即物的な歴史学」のアプローチは興味深い。「モノ」の専門家として伝来遺物の実用品としての側面を見つめ続いてきた、プロフェショナルな眼差しに感心。 2021/02/02
bapaksejahtera
11
武器武具と戦闘の実像を中世を文学作品毎に劃期として述べる。更に図版を用いて武具や防具の構成やその使用例などを詳しく説く。武具のうち刀剣については近世から現代にかけてのバイアスから過度に神聖視されて来たとして、むしろ弓箭の軍事的重要性を説く。武具夫々の機能と特質の説明は具体的で目を開かれる。日本馬の特質と世界比較が不足なく説かれ、馬上戦闘の歴史についても解り易い。軍の構成や意識の変化で馬を狙う歩兵の登場は西洋の軍事史と重なって解り易い。総じてこれほど具体的に過不足なく説かれた軍事歴史著作は不肖初めてである。2021/05/01
のれん
10
弓矢における重要性を説いており、刊行の1997年の事を考えれば先進性もあったのかもしれない。ただ個人的にはネットなどで広まっている情報を掘り進めてくれた内容は少ない。 馬が静止した状態で騎射する傾向があったなど、平家物語から記述重視で推考を重ねる。研究の進歩が待たれる、という感想が強まった。この書籍だけでは満足できないが、中世軍事という名の沼に嵌まるにはいいかもしれない。2019/07/07
やまだてつひと
5
日本において弓矢と刀剣がどのように使われていたのかを文献や現存する刀を通じて分析している本。 刀剣や弓矢の話しではないが、個人的には「私合戦」という合戦がスポーツマンシップに則って行われているという話が印象に残った。 もちろん私合戦以外はルールなどあってないような戦いも多かったらしいが、それでもルールに則って行う合戦というのがあるのが驚きだった。この本では刀剣や弓矢以外にも合戦で使われている防具や馬の事についても詳しく書いてあるので、入門書としてとても分かりやすい本だと思う2024/05/20
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