内容説明
学校、職場、地域といった共同体が衰退し、気の合う者だけで付き合えるようになった現代社会。そこで、息を吹き返したのは旧くて新しい「つながり」だった―。熱狂と興奮のSNS時代でナルシシズム(自己愛)をどう取り扱うか。精神科医が迫る、「推し」ブームが起きているワケ。
目次
第1章 承認の時代から「推し」の時代へ―21世紀の心理的充足のトレンド(「推し」ブームの2020年代;「いいね」と「萌え」の00年代 ほか)
第2章 推したい気持ちの正体―SNS時代のナルシシズム(「推し」は人生を左右する?;承認欲求が薄れ、所属欲求が息を吹き返す現代 ほか)
第3章 「いいね」と「推し」に充たされ、あるいは病んで―自己愛パーソナリティの時代と成熟困難(ナルシシズムを病的とみる時代から、当たり前とみる時代へ;それでも「いいね」と「推し」があるじゃないか ほか)
第4章 「推し」をとおして生きていく―淡くて長い人間関係を求めて(「推す」のも「推される」のも大切;今、あなたは何で心を充たしている? ほか)
第5章 「推し」でもっと強くなれ―生涯にわたる充足と成長(長く続けて、長く成長;ナルシシズムの成長理論 ほか)
著者等紹介
熊代亨[クマシロトオル]
精神科医・ブロガー。1975年生まれ。信州大学医学部卒業。ブログ「シロクマの屑籠」にて現代人の社会適合のあり方やサブカルチャーについて発信(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきぽん
36
推し活心理をコフート理論で明解に説明した前半はよかった。でも後半で、推し推されて自己肯定感を高めるのはキャラクターやSNSではなく身近な人でやりなさい、と主張してるけど、それが難しい時代になったから推し活が流行ってると私は思います。あと、うちらは推しが自分だけのものではないの分かってるから「推し」という言葉使って同担拒否しないようにしてるけど、「俺の嫁」意識は全然あるよ。それに推しが完璧だとも思っていませんよ先生。2025/06/27
ロクシェ
29
評価【◎】自分の正体が「所属欲求を充たし慣れている人」「承認欲求を充たすのが下手な人」だと教えてくれた本格的な心理学の本。所属欲求を充たし慣れている人は雲の上の「推し」を推すだけでなく、もっと身近な「推し」を推したり、多少欠点の見え隠れする「推し」を推したりすることもできる。より多種多様な人を推せることは、そのぶん多くのロールモデルに出会える可能性、より多種多様なスキルを学べる可能性がある。内容はかなり難しいが、薄々感じていたことを丁寧に言語化してくれた感覚があり、学びが多かった。他の著書も読んでみたい。2024/03/07
チャー
21
様々な場面で活躍する他社を応援するという推しであるが、承認欲求や所属欲求など心理学的な側面からその仕組みが解説されている。人と人との関わり合いの時代における環境的な変化などに触れながら推し活のメリットなど紹介されており大変興味深い。身近な憧れの存在となるはずの家族の中で異なる世代に接する機会が減ったことも、外部に憧れの対象を求める要因となっているようだ。自分の内面を適度に充足させる上手に推すという視点は斬新。追いかけすぎたり理想を求めすぎたりしてもよくなく、励みや憧れの源としての適度な活動がよさそう。2024/04/03
kuukazoo
19
ナルシシズム自体は悪いものではなく成熟しているか否かが重要であり、ナルシシズムは人生を通して充足・成長させていくものだというのが、自分にとって新しい見識だった。それはやはり幼少期の(親を中心とした)人との関係のあり方にかかってくるのだが、現代はそのバリエーションが少なくなってしまったこともありなかなか難しいらしい。「ナルシシズムの生態系」という表現が言い得て妙だった。あと挨拶や礼儀の効用など。加齢のせいか承認欲求(認められたい)も所属欲求(群れたい)も薄まった気がして楽かもと思ってたが、違うのかな...?2024/03/10
かめぴ
15
マズロー、コフートにアドラーとなかなかに本格的。数年前から『推し』というものが出来、これはどういうものか知りたかったのと…『推し』に全く興味ない人が、それについてバカにしてくるので読んでみる。ナルシズムかぁ。萌えと推しの違い。承認欲求と所属意識からの。2024/03/10