内容説明
在原業平の東下りは、多く口碑伝承の模糊とした不明の謎に包まれている。その不明さ・曖昧さの中に、典型的な古代の旅がある。幻影の人としての業平が、身をようなきものとして旅立つに至った動機を、藤原氏との確執の中にさぐり、歴史と民俗と文学との間に、自由に出没し自在に飛翔してゆきながら、日本の国土を通過して行った姿を跡付ける。
目次
業平の旅(日本の旅人;「業平の旅」;王氏在原業平 ほか)
東下り(伊勢尾張のあはひ;浅間の山;八橋 ほか)
洛中洛外業平地誌(惟喬親王の伝説;洛南 長岡・大原野;洛南 水無瀬・交野 ほか)
著者等紹介
池田彌三郎[イケダヤサブロウ]
1914年、東京都生まれ。慶應義塾大学国文学科卒業。折口信夫に師事。文学博士。慶應義塾大学文学部教授、NHK解説委員、国語審議会委員等を兼務。1977年、紫綬褒章受章。1982年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takao
1
ふむ2025/01/26
吉田裕子
1
後代の文学を引き、『伊勢物語』の宇津のエピソードがいかに旅人の感受性に影響したかを指摘する下りは興味深く読んだ。八橋の乾飯に対し、「ずいぶんきたないご飯である」と書いてあるところには思わず笑ってしまった。1973年の本であり、50年の間に、『伊勢物語』の研究、業平の研究も積み重なっている。その点は考慮に入れた上で読むほうが良いだろう。巻頭に、当時を偲ばせるような古めの白黒写真群が入っているのがよい。2021/03/07
鈴木貴博
1
昭和四十八年に刊行された「日本の旅人」シリーズの第一巻「在原業平 東下り」の復刻。まず史実として明らかになっている在原業平を押さえつつ、伊勢物語の東下りの物語をたどり、その内容を読み解くとともに物語の形成の背景や後世の受容などに思いを致す。また、洛中洛外業平地誌として、惟喬親王に関することを含め、業平に関する京周辺のゆかりの地を紹介する。物語が形成されていく過程が興味深い。大原、大原野、十輪寺、隅田川の都鳥の歌が詠まれたという伝承地等は訪れたことがあるが、八橋、宇津など他の業平ゆかりの地にも行ってみたい。2019/03/05