小萩のかんざし―いとま申して〈3〉

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  • サイズ 46判/ページ数 461p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163908229
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

昭和八年、慶應大学を卒業したが就職口はなく経済の逼迫に苦しむ父。巨人・折口信夫をめぐる真実に迫る感動の昭和史。作家・北村薫が、父の死後に遺されていた膨大な日記を考証、再生。ミステリ作家・本の達人としての腕を存分に振るいつつ、無名の一青年の目を通した昭和初期の歴史的シーンを繊細に愛情深く甦らせた三部作の完結編。



ドイツではヒトラー内閣が成立し、三月には東北三陸地方に大津波が押し寄せた昭和8年、父は慶応義塾大学を卒業するが、不景気の波が押し寄せる時代に就職口はない。文春の試験にも不合格し(池島信平が合格)、大学院に進むものの家の経済は苦しく、定期を買う金もない。崇拝する折口信夫から満足な評価を得る事もできず、国文学への情熱も断ち切るしかないのかと懊悩しながら東京、横浜をさまよう父の姿が哀切をもって描き出される。一方、文学史上の有名人物と折口信夫が敵対し、罵倒批判された数々の事件の真相に迫る著者の筆はスリリングかつ感動的。時代の背景と状況を踏まえ、文献、日記、関係者の随筆に散見される該当箇所を読み解きつき合わせることで、折口信夫の底知れぬ大きさと怖さ、師弟関係に潜む感情、国文学に生涯をかける人々の熱情と嫉妬があぶりだされる。横山重、佐々木信綱、池田弥三郎、祖父、父、学友たち-ー

あの時代を歩んだ有名・無名の人々の姿を捉える、感動の昭和史。

北村 薫[キタムラ カオル]
著・文・その他

内容説明

昭和八年。ドイツでは年の初めにヒトラー内閣が成立。日本は三月に国際連盟を脱退した。その三月には、東北三陸地方を、想像を絶する大地震が襲った。昨日から今日、そして明日も続くように見える穏やかな日常も、実はたやすく奪われるものだった。この年、父は慶應義塾大学を卒業した。

著者等紹介

北村薫[キタムラカオル]
1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。高校で教鞭を執りながら執筆を開始。89年『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞受賞。2006年『ニッポン硬貨の謎』で本格ミステリ大賞(評論・研究部門)受賞。09年『鷺と雪』で直木賞受賞。著作に、直木賞受賞の“ベッキーさん”シリーズなど多数。アンソロジーやエッセイ、評論などにも腕をふるう「本の達人」としても知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

starbro

137
『いとま申して』三部作、1200P超、完読しました。私小説的昭和文藝年代記、ミステリとは違い本当に著者の書きたかった物語ではないでしょうか?昭和初期の厳しい時代に、文学・演劇・歌舞伎の世界に生きられたのは、幸せだったのかも知れません。『小萩のかんざし 』が象徴的でした。そういう生活がたたって没落するわけですが・・・2018/04/25

KAZOO

126
北村さんのお父さんの日記をもとにして書かれています。その当時の世相やこの本の主人公の先生でもある折口信夫やその周りにいた人々などをうまく描いています。三部作の最後ということなのですがやや時間がたってしまっているので、今度まとめて三冊を読み直したい気があります。2018/08/18

紅はこべ

101
本がなければ生きていけない人達の物語。ここで言う本は、私が普段読んでいるエンタメ系小説とは種類や次元が違う。演彦氏の日本文学古典中心の読書のうち『愛の一家』が入っているのは微笑ましい。演彦氏は横山重(本作で初めて知る名前)とは直接の面識はないらしいので、彼を副主人公格にしたのは、演彦氏の立場を鮮明にするためか。横山より、演彦氏の親しい友で横山の片腕だった太田武夫の像が印象的だ。古典の異本の収集や翻刻の重要性がよくわかる。マスミさんの童話読んでみたい。戦争の記述があっさりなのが意外。特に沖縄の。2018/09/29

ダイ@2019.11.2~一時休止

87
近代芸術史(主に文学)完結編。もうおなか一杯なのでミステリーの方を書いてください。2018/04/29

NAO

73
民族学者で高校教師だった父親の生涯を描いた三部作の第三作目。作者は、何者かになりたくてなれなかった父親の姿を何とか形に残しておきたいと考えた。辞世の句で自らを竹田奴(文楽の舞台に端役として登場し、目立つことなく舞台を去っていく人形)になぞらえた父親だからこそ、その父親の姿をはっきりと残すための舞台を作りたかったのだろう。だが、父親を語ろうとすると、どうしても折口信夫の話になってしまう。作者は凝り性で完璧主義主義でもあるようだから仕方ないのだろうが、途中で、いったい何を読んでいるのだったか⇒2021/03/10

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