内容説明
わたしは宇佐見陶子と申します。骨董業―といっても旗師といいまして、店舗を持たずに競り市から競り市へ、骨董店から骨董店を渡り歩いて品物を仕入れ、流通させるバイヤーのような存在なのです。骨董の世界は、魑魅魍魎の住処と言われます。時に悲劇が、時に喜劇が、ない交ぜに流れて人々を押し流してゆく。そうした光景が日常的に観察される世界です。騙しあいと駆けひきの骨董業界を生き抜く美貌の一匹狼。古美術ミステリー。
著者等紹介
北森鴻[キタモリコウ]
1961年、山口県生まれ。駒沢大学文学部卒。編集プロダクション勤務を経て、執筆活動に入る。1995年、明治初期の名優沢村田之助を素材にした時代推理「狂乱廿四孝」で第六回鮎川哲也賞受賞。1999年、「花の下にて春死なむ」で第五二回日本推理作家協会賞を受賞
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感想・レビュー
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あつひめ
64
短編に出てくる冬狐堂は、ものすごく行動的な感情の起伏もはっきりしている女性のように感じられる。短い中にギュッと陶子の生き様が詰まっているような感じ。長編もいいけど短編も面白い。陶子を中心に様々な人間関係がくもの巣のように四方八方に糸が張り巡らされている。古物商やら警察やら。一人の孤高な女狐も実は様々な人の支えがある中で生きている。古いものの中には今では知りえない古傷や喜びが小さな傷一つの中にも沁みている。だから古物商はやめられないのかもしれない。陶子と硝子のコンビもナイス!!瑠璃の契りも楽しみ。2012/12/29
れみ
39
旗師・冬狐堂シリーズの連作短編集。北森鴻さんの作品は、最近は長編も読むようになってそれはそれで好きだけど、短くても内容が濃くて一話ごとに満足できるので、やっぱり短編がすごく良い作家さんだったなと思う。「瑠璃の契り」もそのうち読んでみよう。(追記)それにしても、この本のメインのお話は分量や内容から言って「奇縁円空」だと思うけど「緋友禅」が表題作になってるのは上手いなあと思う。言葉の響きや字面が良い。2014/04/25
きつねこ
30
冬狐堂陶子さんのシリーズは全部読んだつもりでいましたが、嬉しい勘違いでした!陶子さんの良さがむぎゅっと集約された中短編集。焼き物、埴輪、織物、仏像と出てくる品目も多岐にわたり本物贋作盗品など出処もさまざまで趣向がきいています。そこに殺人事件。情の深さも見えてきて、陶子さんがますます好きになりました。2014/11/04
よむよむ
24
表題作『緋友禅』のギャラリー内を見た陶子の息を呑む様に同化してしまった。圧倒的な緋色が網膜に焼きつくようだった。そして『奇縁円空』では先人の仏像を彫ることへの怖いほどの妄執を感じた。そしてコレクターとしての陶子さんの一面も垣間見られて面白かったです。短編、中編、長編、いずれも好きだな~冬狐堂シリーズ。ちょっと古道具屋をのぞいて見たくなりました。2010/05/03
ぶんぶん
22
【図書館】違うシリーズで「宇佐美陶子」の事を知り、こちらへ、ところが第3弾でした。 まあ、短編集だからと読み始めましたら「骨董」の知識が半端ない。 そんなに詳しくなってしまってと、読み進めるがやはり、民族学のセンセイと一緒だ(笑) ミステリーで入ったが、いつの間にか骨董載の世界へ。 北森鴻、流石に色々と仕入れてくれる作家だ。 急逝が惜しい・・・2024/11/29