内容説明
多発するいじめや虐待、マナー違反…。「道徳」の機能不全が叫ばれ、学校での教科化が議論されている。日本人のモラルは高いはずではなかったのか!?人気哲学者が、ソクラテスから始まる西洋哲学の大きな流れを踏まえてイチから考え直す。政治・公共哲学、応用倫理学なども駆使しながら、多様な価値観がせめぎあう現代社会の諸問題に対して、思考停止せず向き合うための術を説く一冊。
目次
第1章 「道徳」の転換点―心の問題から公共・政治の問題へ
第2章 哲学は道徳をどう考えてきたか
第3章 “自分”―なぜ誠実に振る舞わなければいけないのか?
第4章 “他者”―人を利用するのは悪いことか?
第5章 “命・自然”―環境を破壊し、動物を殺すのはいけないことか?
第6章 “集団・社会”―ルールやマナーは絶対守るべきなのか?
第7章 「道徳」の消える日―自分の頭で考えるためのレッスン
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ichiro-k
19
世間で大方の意見が出尽くしたような話題(コミュニティ・原発・いじめ・エコロジーなど)を「後だしジャンケン」よろしく小賢しく解説。 今時のマスメディアが好みそうな人物。2014/03/05
ほじゅどー
15
★★★文科省が全国の小・中学校に配布している道徳の補助教材「心のノート」の問題点。一見、名前からして癒し系の印象を与えるが、その中身はかつてないほどの国家教育の完全マニュアル。国家教育の恐ろしさは国益を優先させ、それを支える無批判的大衆を形成し、戦争ができる国家に必要な「愛国心」を国民に植え付ける心の国家教育。国民主権でなく国家による国民の統治へ。民主主義的精神、批判的知性を忘れさせるプログラムである。2018/02/12
naji
13
【図書館本】単なる模範解答ありきの道徳はあってないようなものであること。もう少し、日常の物事に対し『自分の頭』でしっかりと考える必要があるだろう!2017/12/30
ceskepivo
8
現在の「道徳」教育がどうなっているかは分からいないが、自分の頭で「正しさ」を考えることが重要であることは納得。そのためには、哲学が思考の基軸になると理解。2015/04/12
入江・ろばーと
4
今の道徳に教科書はないだろという突っ込みはさておき、「自分の頭で考えるため」に進められているのが今の教科化なはず。それを無視して、集団的自衛権に関する国民的議論が盛り上がらなかったのは、戦後の道徳が戦前の修身と同じく国家に従順な人間を育てるためのものになったから、というが、意味不明。 「答えありきの道徳教育」なのは、教える側がその方が「楽」だから、という現状があるのは否めないはず。そこから脱却して、「自分の頭で考え」られるようにする道徳教育へ転換するための方策を模索しなきゃ、教科化しても「同じ」なのだが。2015/04/19