出版社内容情報
実業界の寵児で天才棋士――。男は果たして殺人犯なのか!?さいたま市天木山山中で発見された白骨死体。唯一残された手がかりは初代菊水月作の名駒のみ。それから4ヶ月、叩き上げ刑事・石破と、かつて将棋を志した若手・佐野の凸凹コンビは真冬の天童市に降り立つ。向かう先は、世紀の一戦が行われようとしている竜昇戦会場。果たしてその先で二人が目撃したものとは!?日本推理作家協会賞作家が描く、渾身の将棋ミステリー!
内容説明
埼玉県天木山山中で発見された白骨死体。遺留品である初代菊水月作の名駒を頼りに、叩き上げの刑事・石破と、かつてプロ棋士を志していた新米刑事・佐野のコンビが捜査を開始した。それから四か月、二人は厳冬の山形県天童市に降り立つ。向かう先は、将棋界のみならず、日本中から注目を浴びる竜昇戦の会場だ。世紀の対局の先に待っていた、壮絶な結末とは―!?
著者等紹介
柚月裕子[ユズキユウコ]
1968年、岩手県生まれ。2008年、『臨床真理』で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。2013年に『検事の本懐』(宝島社)で第15回大藪春彦賞を、2016年に『孤狼の血』(KADOKAWA)で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、『慈雨』(集英社)で“本の雑誌が選ぶ2016年度ベスト10”第1位を獲得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
1268
柚月裕子は、新作中心に読んでいる作家です。[柚月裕子×旬の将棋]で面白くない訳がない、560P超一気読みです。今年のBEST20候補、著者10周年記念作品だけあり、気合いが違います。大宮が事件の舞台になっているのも親近感が湧きました。私は将棋に関しては初心者なので、中級者以上だともっと本作を楽しめると思います。柚月裕子は、女松本清張かも知れません。2017/10/12
ヴェネツィア
1227
プロットも主人公も全く違うのだが、作品の表象する世界と読後の寂寥感は『砂の器』を思わせる。終始寒風が吹き続けるような趣きの小説である。物語の幕開けの舞台は天童市での竜昇戦(竜王戦がモデルと思われる)である。山形市に在住する著者だが、将棋に対する造詣は指南者がいたとはいえ、なかなかに大したもののようである。そして、500ページ超ありながら、一貫して緊張感を保ち続ける筆力もまた。ただ、タイトルにも選ばれている「盤上の向日葵」の意図はわからなくはないが、将棋とともに小説そのものを甘くしてしまったのは惜しまれる。2022/07/07
鉄之助
1132
気にはなっていたが、なかなか読めなかった1冊。藤井聡太の2冠達成を記念して手に取ったが、読みだしたら、面白すぎて一気読み。将棋の駒の銘品をめぐって、現在と過去が交錯しながら展開する上質なミステリーに仕上がっていた。事件を追う刑事二人のキャラクターが絶妙で、まったく飽きさせない。将棋界の「正統派スター」と「異端の革命児」の対決など、個性的なキャラクターの棋士が多い、現在の将棋界を予見するような筋立てもたまらなかった。2020/08/23
zero1
1126
【将棋界を舞台にした「砂の器」】に柚月が挑んだ550ページを超える力作。山中で見つかった遺体は高価な駒が一緒だった。駒を追う刑事二人。ひとりはプロ入りを断念した過去が。交互に描くのは後にプロ棋士となった過酷な環境にある少年の物語。柚月がどうしてこの作品を描くことになったか(後述)。賭け将棋で金を得る真剣師の存在と棋士たちの壮絶な戦い。愛されない子の存在理由と支える人の想い。将棋を知らない人のために【王と玉】も解説。読む価値はあるが欠点も(後述)。18年本屋大賞2位。19年NHKーBSでドラマ化。2020/02/05
パトラッシュ
1116
柚月裕子版『砂の器』か。世間的には成功した人物の隠したい過去と、彼の絡んだ事件を追う刑事が少しずつ交差していく構成は似ているが、母が早世し虐待した父親に成長後たかられる息子の物語は『銭ゲバ』を連想させる。蒲郡風太郎は誰にも救われず犯罪に走るが、本作の主人公は信じられる人がいたおかげで正道へ進めた。しかし救われるきっかけとなった将棋への情熱故に思わぬ世界を知り、破滅へと突き進む。運命に翻弄される男たちのドラマは面白いが、社会の矛盾や痛みとの関りは薄い。父親が虐待する原因もとってつけたようで今ひとつだったか。2020/11/09