定義集

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  • サイズ B6判/ページ数 299p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784022508102
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0095

出版社内容情報

2006年から2012年まで、朝日新聞に好評連載されたエッセイの単行本化。ノーベル賞作家は、中学生時代から老年の今日にいたるまで、人生の習慣としてさまざまな言葉を読み、そして書き写してきた。本書は、なかでも忘れがたい言葉の数々を、もう一度読み直す。
 たとえば、フランスの哲学者であるシモーヌ=ヴェイユの「どこかお苦しいのですか?」。知的障害のある息子との暮らしのなかで、著者は常にこの言葉に支えられてきた。不幸な人間に対して、好奇心ではなく、注意深く問いかける。何気ないけれど重みのある一言。
 あるいは、徳永進医師との対話で、鶴見俊輔が語った「まなびほぐす」。知識は覚えただけでは身につかず、それをまなびほぐしたものが血となり肉となる。小説家も「学び返す」「教え返す」という同じ作業をしているのだ。
 ほかに『カラマーゾフの兄弟』でアリョーシャが病気で亡くなったイリューシャの埋葬において発した「しっかり憶えていましょう」、ヴァレリーの「精神の自由と、せんさいな教養が、子供への押しつけで壊される」、魯迅の「不明不暗『虚妄』のうちに命ながらえる」、そして源氏物語の一節から、チェルノブイリ原発事故の小説まで――六十数年、言葉を手がかりにして思索を積み上げてきた作家の、評論的エッセイの到達点。

内容説明

敬愛する言葉を書き写し、読み直し、自前の定義をする。源氏物語、ドストエフスキー、魯迅、レヴィ=ストロース、井上ひさし、人生のさまざまな場面で出会った忘れがたい言葉をもういちど読み直す。ノーベル賞作家の評論的エッセイの到達点。

目次

注意深いまなざしと好奇心
軌道修正を促した友人の目
滑稽を受容することとその反対
子供じみた態度と倫理的想像力
民族は個人と同じく失敗し過つ
読み直すことは全身運動になる
私らが繰り返してならぬこと
日本人が議論するということ
後知恵の少しでも有効な使い方
「学び返す」と「教え返す」〔ほか〕

著者等紹介

大江健三郎[オオエケンザブロウ]
1935年愛媛県生まれ。作家。東京大学仏文科卒。大学在学中の58年、「飼育」で芥川賞受賞。以降、現在まで常に現代文学をリードし続け、『万延元年のフットボール』(谷崎潤一郎賞)、『洪水はわが魂に及び』(野間文芸賞)、『「雨の木」を聴く女たち』(読売文学賞)、『新しい人よ眼ざめよ』(大佛次郎賞)など数多くの賞を受賞、94年ノーベル文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

寛生

24
言葉にー丁寧に、忠実に、誠実にー自らの魂をもって向き合い、自らの魂に言葉を刻んできたか、大江自身の生きてきた軌跡が現れている。ゆっくりと、うそをつかず、しかも情熱をもって、言葉と向き合ってきたのが伝わってくる。ただならぬ〈祈り〉ともいえる大江の「書く」という習慣がここに現れている。晩年の大江の言葉が凝縮されている。2013/09/17

しょうじ@創作「熾火」執筆中。

20
2006年4月から2012年3月にかけて朝日新聞文化面に月1回で連載されたものに加筆。やはり難しかった。様々な引用と執拗に響き合う大江の言葉。例えば、『沖縄ノート』の記述を巡る裁判。例えば、福島の原発事故。風化に抗して忘れないでいるということが、一つの方法になっていると思う。『新しい文学のために』に引用されたミラン・クンデラの、「人間の権力に対する闘いは、忘却に対する記憶の闘いだ」(確かこんな感じ)を思い起こさせる。2016/02/15

味読太郎

11
ラジオ版学問のすゝめPodcastで、大江健三郎さんがゲストの回を聴き2006年から2012年まで大江さんが連載したエッセイをまとめたこの「定義集」を買いました。ラジオでの大江さんの話・声、そして本書を読んで、臆病なほど敏感に、なんて言葉に対して真剣な人なんだと思います。読んだ本のフレーズや、言葉をメモや本に書きつけるということを習慣とし、70年もその習慣を続けている大江さんの敬愛する作家の言葉や学者の言葉などを引用しながら、自前の定義を述べている。本書より、「学びほぐす」「unlearn」などの言葉は2014/08/31

壱萬参仟縁

9
A.センの潜在能力、福祉を大江氏は、資質が伸びる自由があれば生活の良さが達成できると解釈した(15ページ)。評者も支持したい。外山滋比古氏の場合もそうだが、作家のリズム感のある文章は小気味良く模範にしたい。「人には何冊の本が必要か」(132ページ~)。『トルストイ日記抄』。確か、「人にはどれだけの土地が必要か」という問いが原点にあったと想起した。それはさらに、鈴木孝夫先生の「人にはどれだけの物が必要か」へと展開していった。素晴らしいこの「人にはどれだけの○○が必要か」という問い。全て文明への懐疑が下地か。2013/01/26

梟をめぐる読書

9
3・11後の情況にも触れられた大江氏の入魂の時事評論の感想として尋常ではないのだが、表紙の氏を描いたイラストが熱々おでんを頬に押し当てられているように見えて仕方なく、「人には何冊の本が必要か」「新しく小説を書き始める人のために」などまさにダイレクトに響く見出しが踊っているのだが、やはり表紙のイラストがダイレクトに熱々おでんを押し当てられているように見えて仕方なく、人の世の生きづらさと不条理を思った。2012/12/27

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