内容説明
ロシア専制政府に止めを!セルゲイ大公暗殺に成功した戦闘団は、次々に標的を定め、テロを決行する。しかし最高指揮者アゼーフは権力側との二重スパイだった…心優しきテロリストたちを死地に追いやった冷徹な指揮者サヴィンコフが、詩人の感性をもって書き綴った、ドストエフスキー等のロシア文学理解に不可欠の記録。
目次
第1章 ドゥバーソフ、ドゥルノヴォー暗殺未遂(労働者義勇隊との接触;二つの道―第一回社会革命党大会;テロ再開へ ほか)
第2章 逮捕、逃走(逮捕さる;脱出なるか?;スリャチツキーという男 ほか)
第3章 アゼーフ裏切りの暴露(アゼーフ告発の手紙;ブゥルツェフとバカイの証言;名誉裁判 ほか)
著者等紹介
サヴィンコフ[サヴィンコフ][Савинков,Б.]
1879‐1925年。詩人・作家ロープシンの本名。エス・エル戦闘団を指揮して、モスクワ総督プレーヴェ、セルゲイ大公の暗殺に成功。1917年の革命の後、白軍の武装蜂起を指導し、逮捕され死去
川崎浹[カワサキトオル]
1959年早稲田大学大学院(露文学)修了。ロシア文学者。早稲田大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うたまる
1
「同志たち。党は一網打尽の恐れがある。二人の有力なスパイが脅威を与えている。(中略)あなた方はこの二人を知っているはず」……現代に生きる者が過去の是非を問うのは野暮というものだ。封建社会のロシアに生きた者の感覚こそ本物だと信じている。しかし、だ。彼らの行為の結果についてはシビアに見る必要がある。彼らの英雄的な革命行動は日本に、スパイに、共産党に利用された。ロマノフ朝の専制から民衆を救いたいという切なる願いは、より残酷な恐怖と粛清を呼び込んでしまったのだ。理想家は自分の青臭さに自覚的であらねばならない。2025/02/15
俊太郎
0
テロの失敗、逮捕と脱獄、戦闘団の衰退、アゼーフの査問。社会革命党戦闘団の流れが仲間への哀悼を込めて綴られる。アゼーフ査問のくだりは特に面白い。基本的に社会革命党のことに終始し、レーニンのレの字も出ないのはちょっと驚き。2017/10/29