感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
54
「52歳のぼくから27歳のぼくに宛てた長い手紙」とデビュー作『存在論的、郵便的』に自分自身に応答していると書いている。加えて第2部で落合陽一や成田悠輔を批判するが、それは彼らが10年前に著者が発表した『一般意志2.0』の後半部分と似ており、こちらも自分自身を批判し自分自身に応答することにもなっている。並々ならぬ意気込みの、総括的な位置づけの本という印象を受けた。ウィトゲンシュタイン、クリプキ、ローティ、アーレント、ルソーといった哲学者、思想家のパッチワークで本書は構成されている。そういった本は知識が無いと2023/09/07
yutaro sata
29
根本的な話がなされているからだと思うが、他のいろいろな本、例えば『共同幻想論』であるとか、今読んでいる『人はみな妄想する』であるとか、鷗外の「かのように」などを意識しながら読んでいた。 家族的なものからは決して逃れられないし、人間が人間である以上人文的なものを、無しには出来ないのだから、その場所でジリジリと粘っていくことが必要だ。2023/10/28
原玉幸子
28
東は、哲学を捏ね繰り回すのではなく分かり易く、又切り口や言葉の置き換えが面白いのが良いと思っていますが、ルソー『新エロイーズ』から「訂正可能性」に誘導する解説には、「あの『孤独な散歩者の夢想』のルソーやろ」との偏見で読んでしまい少し中だるみでした。東が「人文系は過去のアイデアの組合せで思考する」と言い訳っぽく表現しているのが不思議で、過去の哲学者の言説の引用が多過ぎる気がします。「人工知能民主主義」古典発想はもっと短くして、もっと東の切り口で現今の社会世相に言及すればいいのに。惜しい。(◎2023年・冬)2023/12/17
逆丸カツハ
25
間違っている人は問答無用でボコボコにしていいというような時代の風潮を捉え抗う切り口がいいなぁと思った。家族の外にはまた家族というのもなかなか面白かった。国家、資本主義を超えるものは出てこないというのは判断が時期尚早ではないかと思う。たかだか数千年の歴史で、人の作り上げることのできるものが全て出切っていると考えていいのか悪いのか。まあ、誰が何を言おうとそれは歴史が答えを出すことである。個人的には100年後でも1000年後でも、一万年後でも、戦争も格差もなくなる世界が来ればいいなぁと思う。2023/10/05
シッダ@涅槃
20
刺激的で面白かった。時間があるときはほぼ夢中になって読んだ。◆「人工知能型民主主義」 (東の造語)が本気になって論じられている現状は知らなかったが、そのヌルヌルしたうわっすべり感を批判するに、いわゆる「(超)監視社会」を軸とせず、「それは人間が欠如する、育成されない」という視座からの批判。こうまとめてしまうと古臭いのだが、そんな印象本文では全くないです。◆アーレント『人間の条件』の理解を深めるための本にもなりうると思う。2023/11/07