内容説明
怖ろしくも美しい。哀しくも愛おしい――。シリーズ第3弾。建物にまつわる怪現象を解決するため、営繕屋・尾端は死者に想いを巡らせ、家屋に宿る気持ちを鮮やかに掬いあげる。恐怖と郷愁を精緻に描いた至極のエンターテインメント。全6編収録。渓谷で起きた水難事故で若者が亡くなる。彼は事故の直前、崖上に建つ洋館の窓から若い女に手招きされていた。一方、洋館に住む多実は、窓の外に妖しい人影を見る。(「待ち伏せの岩」)イビリに耐えて長年介護してきた順子には、死後も姑の罵詈雑言が聞こえる。幻聴だと思っても、姑の携帯番号から着信を受け、誰もいない家の階段で肩をつかまれ……。(「火焔」)温かい家庭を知らない弥生は、幸せな家族を人形で再現しようとする。しかしドールハウスを作り込むうちに些細なきっかけで「歪み」が生じ、やがて異変が起こる。(「歪む家」)典利は戸建てを新築し、第一子の出産を控えた妻と母親が暮らしている。以前に住んでいた屋敷には幽霊がいた。当時を思い返した典利はふと、あることに気付く。(「誰が袖」)ほか、全6篇を収録。解説・漆原友紀
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
124
小野さんのシリーズ3作目です。またやってしまいました。2年ほど前に単行本で読んでいるのに、文庫本での再読です。興味あるシリーズ(夢枕さんやあさのあつこさんなどの)ですと待ちきれずに時たまやらかします。ただ再読しても、「待ち伏せの岩」や「歪む家」などは楽しめます。前者はドイツの伝説のローレライを思わせる感じで、ガラスに閉じ込められた何者かが怖さを引き立ててくれます。4作目も単行本で出されているようです。2025/06/20
neimu
104
表紙がね、もう黒髪のギンコだよ。漆原さんの絵のせいか『蟲師』のキャラと重なる。病を目に見えぬ物によって治す、癒すが如く、家の建物の障りをできる範囲で修理し、宥め、景色を替え、人の心を、土台を、隙間風を、歪んだ思いや執着、思い込みを居住まいを正すが如く、手を入れていく。そのさりげなさが物足りなく感じるときもあるが、徹底的に何かをしてしまうよりはほどよく折り合いが付いて良いのだろうと感じさせもする。小説としての迫力は描写は今ひとつで雰囲気とシリーズの流れに負うところが大きいものの、世界観が安定している怪異譚。2025/06/20
杳
64
日々を蝕んでいく重苦しく閉じ込められた思いが、尾端さん達のほんの少しの気づかいで一変する。いつも大きな両開きの窓を開けたように視界が開けたような気分で読み終われる。今回はラストで優しい気持ちになる作品が揃っていたと思う。「骸の浜」が特に好き。2025/06/18
眠る山猫屋
63
幽玄・・・と言ってしまったら言い過ぎか。各話の主人公たちにとっては重苦しく辛い環境をもたらす不思議な事象。そして、それらをバッサリ解決するのではなく、受け入れ易くしたり、納得できる答えに改善してくれる手伝いをするに過ぎない営繕苅萱・尾端さん。巻が進むにつれ、登場する頁も減っている気がするなぁ。静謐で人の気配の薄い城下町の雰囲気も相変わらず悪くない。各話のタイトルは怖いが、起きる事件はそれほどでも。いや、嫁いびり婆さんの亡霊は厭だが。物語は深々と語られていく。静かに続きを待とう。2026/05/11
つばめ
59
好きなシリーズ3作目。家や物にまつわる怪異に悩まされたり恐怖を覚えてしまう日常。「営繕かるかや」の尾端が大工仕事を通して、それらの恐怖を解きほぐしていく。何かを退治したり戦ったりで解決するわけではなく、怪異の原因やその後もしっかり描かれている訳ではないけれど、家での過ごし方や物の残し方で気持ちを少し上向きに、うまく共存していく道もあるよと教えてくれる。「火焔」「骸の浜」が印象的。2025/08/23




