内容説明
記憶をなくした男とその妻、十五年前の恋人
戦場で記憶を失った男をめぐる三人の女性の心理劇。ケアの視点からも再評価される英国モダニズム小説。併録「終わらない結婚生活」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
69
夫の従妹がいやなのよね。好きなように語ってんじゃないわよ!と思う。そういう女に作者が書いているんだろう。第三者的視点をもっているはずなのに、嫉妬が混じるから主観的。本当は妻の希望通りになるかもしれないじゃないの、と思わせられる作者の筆運び。戦間期小説として、シェルショックの問題提起として読むだけでなく、老人性痴呆を重ねて読むと、自分はこの夫のような症状を呈した場合、誰を思うのかと考えた。2026/07/30
たまぞう
2
「兵士の帰還」「終わらない結婚生活」の2作を収録。前者は第一次世界大戦のさなか、シェルショック(現代のPTSD)により記憶喪失になって戻ってきた男をめぐり、いとこ(語り手)・妻・元恋人が恋慕、嫉妬、純愛を向けあう。階級社会ならではの、悪気のない優越感のまなざしも見どころ。後者は平凡なスペックの男性が、活発で魅惑的な妻に対して思い違いゆえの憎しみを募らせていく。両話とも読ませる場面はままあったけど、夫婦のなれそめの描写に乏しく結婚の必然性が曖昧。そもそも結婚してなけりゃこんな不幸せにも遭わなかったろうに。2026/02/20
takeakisky
0
シェルショックによるクリスの解離性健忘。従妹ジェニーのバランスは対照的な二人、キティとマーガレットの間で揺れる。身体と魂の相剋。その作用点は、過去と現在のクリス。醜悪な手への言及が繰り返されるが、マーガレットのみすぼらしさへの描写は冴えない。それが、ジェニーなりのバランスを取るための錘なのだとしたら。対照となるキティのスノッブぶりが上っ面な描写なのも頷ける。私も優柔不断な気持ちで読み、心地よくない余韻を楽しむ。多分フロイト的医者が正しいのだろう。2026/09/30
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