内容説明
亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
148
2025年に映画化された辻村深月の青春小説。当たり前の日常が自粛という波に飲まれ、消えた2020年。茨城の高2・亜紗はコンクールの中止に落ち込み、渋谷の中1・真宙はサッカーを諦め、長崎の高3・円華は実家が旅館を経営していることに負い目を感じる。それぞれに満たされぬ思いを抱える彼らが見つけた「宝物」は、遥か空の彼方にあった――。自作の望遠鏡で制限時間内にどれだけ星を見つけられるかを競うコンテストをスターウォッチではなくスターキャッチとは洒落た命名だ。星空の下のソーシャル・ディスタンスを懐かしみつつ、下巻へ。2025/08/03
セシルの夕陽
56
新・文庫化♡ 天体観測に熱い想いを投じる中高生たちの青春。ただ時は2020年のコロナに右往左往している真っ只中だ。正しく恐る、3密を避ける、感染予防を徹底する… 5年前の息詰まった毎日を思い出す。都内近郊と地方との違いもあったあの頃。大人も大変だったが、部活の大会や修学旅行、登校できない日々など、学生たちにとって一度しかない大切な時間も奪われた。できる範囲で楽しいことを見出した【スターキャッチコンテスト】が動き出した🌟 下巻へ!2025/06/29
seba
41
2020年、コロナ禍による自粛ムードの中、学校という場でも大小様々なことが制限された。一度しかない時間が根こそぎ無くなってしまうなんて、生徒たちにとってこんなに悔しいことはない。そんな中でも、目的意識に囚われずできることを探す生徒たちがいた。茨城、渋谷、五島にある四校の中高生たちは、自作望遠鏡による「スターキャッチコンテスト」のリモート開催を計画することに。ウェブ会議ツールを介し、皆自然と少しずつ青春を取り戻していく。部活動廃止という一部の潮流もある中、各校の顧問の先生の部員への関わり方はとても頼もしい。2025/07/12
よっち
36
コロナ禍による休校や緊急事態宣言。やりきれない思いを抱えている時に、天文に興味を持った中高生たちがスターキャッチコンテストに挑む青春小説。これまで誰も経験したことのない事態に直面する中、天文部に所属し望遠鏡で星を勝ちスピードを競う「スターキャッチコンテスト」開催を目指す高校生の亜紗、進学した中学の新入生で唯一の男子だったことにショックを受ける真宙、他県からの宿泊客が泊まるため、友人からも距離を置かれる旅館の娘・円華。そんな彼女たちが繋がりを得てこれからどういう展開になっていくのか続きが気になる上巻でした。2025/06/18
タルシル📖ヨムノスキー
30
あれからもう5年なんだなぁ。コロナ感染症の爆発的流行による緊急事態宣言、リモートワークの推奨、学校は休校、マスク着用とソーシャルディスタンス、そして自粛警察。息苦しかったあの頃、大人にとってはたかが数年、でも学生にとっての数年は大人のそれとは意味合いが違う。コロナ禍で全ての活動が制限された茨城、東京、そして長崎の中高生が、〝スターキャッチ〟という天体観測競技で結ばれるという物語。話はあの頃の息苦しさと場当たり的な対応に振り回された中高生の葛藤から始まり、イベントに向けての準備が始まったところで上巻終了。2025/07/08