内容説明
かみしめるように読みたい著者最後の作品集。十二の深い傷跡を全身に刻んだ女のこと。少年に悪戯(いたずら)され暗転した小四の夏のこと。五角形の部屋で互いの胸の奥に封じ込めていた秘密を明かしたとき、辿り着くのは――急逝を惜しまれた著者最後の作品集。まさに着手寸前だった長編『群生(ぐんじょう)』のプロット200枚も収録! 野沢ミステリーが目指した高みが迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
49
野沢尚の遺作。短編2作と長編「群青」の筋書が収録。脚本家から作家に転身した野沢尚は、サスペンスから恋愛モノまで多彩な技をもつ作家だった。自害は惜しまれる。表題作「ひたひたと」は、39歳10か月の主婦が主人公のサスペンス。すごすぎる結末のストーリーで実に面白い。「十三番目の傷」は男のズルさが描かれている。筋は面白いがホラーの領域の話。戦慄が走るこの手は苦手である。未完成「群青」は面白い。残念の一語に尽きる。「生きることは死ぬこと。死ぬことは、人々の心の中で生き続けることだ・・」北方謙三の弔辞が心に沁みる。2015/02/10
たぬ
41
☆4 残る二人の性もゆがんでいるのだろうか? ホストがこの会を催した真の目的は? 完成していたらきっと読み応えたっぷりのものが出来上がっていただろうから急死は本当に残念。併録された『群生』のプロットもこれほとんど完成してるよね? という高レベルなもの。悲しみと切なさが深い。2021/05/30
yumimiy
27
…知らなかった。その分、ラストの「弔辞」にエ~!😱、オマケにこの本を選んだ状況が思い出せない…ヒ~!😱、もしかして呼ばれたのか…Ahhh!😱、しかも内容が…😱!①十三番目の傷、これは自分にも思い当たる。幼少期には無かった腕脚の皮膚が、漂白剤をぶちまけた様に斑に。一応女なので皮膚科へ、診断は奇病扱い。成人したらめでたく黄色人種に戻った。似た症状の方、安心してマイケルにはならないから。②ひたひたと、これは、男が悪い!欲情するなとは言わないけど清く正しく。可愛い幼女を見つけてもパンツ脱がしたら犯罪者だよ2021/07/22
minami
25
哀愁と寂寥感が作品全体に漂っています。 野沢尚先生は人間の光と闇を描く、孤高の天才作家でした。 ひたひたと真実に迫りくる、サスペンスホラー、ラストの誕生プレゼントは衝撃です。いい作品は時を経ても色あせないですね。 2017/03/14
詩界 -うたか-
21
#読了 #野沢尚◆私の話を始めましょう――「秘密の友人」というHPをクリックした経緯について。私が出会った女性・佐和子には驚くべき傷があったのです。それも、多くの【十三番目の傷】息子の有平から久々の電話がかかってきた「僕が生まれてきたのは間違いだったのかな」といい自殺してしまう。自殺に追いやられたのはなんだったのか。そして一本のビデオテープが届けられた【群生】連作の未完。そして途切れ途切れのプロットと書かれた小説。虜になるほど面白いのに完全版が読めないことが歯がゆい。ラストから手紙のシーンを読み返した2020/02/06