内容説明
まだまだ続くヒターノの親方の驚くべき物語の数々、数学者ベラスケスの奇妙な生い立ちの物語、大商人の息子ロペス・ソワレスの恋と、彼につきまとう妙な男ドン・ロック・ブスケロスの物語、そして真正完全版では削除された〈さまよえるユダヤ人〉の物語……。奇想天外で混沌とした迷路のようなポトツキの世界がさらに広がる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
maqiso
3
親方の中世的な冒険譚と古代エルサレムの伝説と近世的な自然観を行ったり来たりしていて、読みにくいが面白い。登場人物が枠物語という形式を批判し出すのは笑ってしまうが。2024/07/30
迦陵頻之急
2
岩波文庫の1810年版では語られない「さまよえるユダヤ人」とそのエピソードがいよいよ登場。さらに早々と登場していた数学者ベラスケスの語りも参入。アバドロ親方の語り、さまよえるユダヤ人の語り、ベラスケスの語りが同時進行しつつ交互に語られ、しかもそれぞれが入れ子構造となり、挙句に作中人物自身が、「誰が話して誰が聞いてるのか混乱します」とぼやき出す。しかもそれが本の帯の宣伝文句?になってるし。岩波版では、後半になると「ジプシーの族長の物語」ばかりが延々と続くので読み易いのは確かだが、迷宮度で勝るのは本書の方。2024/07/03
funa1g
1
上巻に比べ場面が動かず、親方とさまよえるユダヤ人の語りが続く。さらにベスキオスの数学と形而上学を混ぜたような話が挟まるので、全体としてはややかったるい。親方の話が入り組んでいったときに、ベスキオスたちが、また別の人の話になるんだ、この順番で語ったほうがわかりやすいのに、とぼやきはじめるのは愉快。話が収拾つくらしい下巻を楽しみにする。2024/08/18