内容説明
迷宮で異世界エルフは世界の真実を知るーー。
「オークの島ですか？」「いや、大久野島だ」
中田忍の意志に自ら背き、晴れて中田忍との同居を勝ち取った異世界エルフ、河合アリエル。
自動車の運転を体得し、パートタイマーとして職に就き、少しずつ確実に現代社会との融和を進めつつあるアリエルの姿を見る忍の眼差しは、決して優しいばかりではなかった。
そして明らかになる、新たな耳神様伝説の残痕。
忍たちの暮らす地に点在する、両耳が欠けたいくつもの古いお地蔵様。
耳神様あるところに現れる、謎の老人と大きめのコーギー犬。
アリエルの切なる願いに応えた忍は、夏の陽炎を捉えるべく、両手にヘラを構えて焼きそばを炒める。
鍵を握るのは、旧日本軍の負の歴史が佇む”東京第二陸軍造兵廠、忠海製造所”。
あるいは”毒ガスとうさぎの島”と呼ばれる国民休暇村、広島県竹原市忠海町、大久野島。
迷宮の先で異世界エルフが目にする、世界の真実とはーー
「ここは、天国ではーーありませんでした」
幸福な結末を踏み越えて、傷付け傷付き合う社会派現代ファンタジー、第六幕。
※「ガ報」付き！
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
オセロ
30
明かされる異世界エルフの真実の一部。 再び始まったアリエルと忍の生活。車を運転したりアルバイトしたり今まで以上に社会に進出するアリエルだった一方で、忍たちは耳神様の真実に迫る…。アリエルより先に地球を訪れた異世界エルフの耳神様。彼女が経験した非道な扱いの結末を知ったアリエルは何を思うのだろうか…と思ったら最後の最後で爆弾が投下された模様。2024/02/22
サケ太
15
今回エルフの真実の一端が明かされる。次回の波乱への伏線も敷かれ超楽しみ。2023/10/21
ツバサ
10
アリエルに現実を突きつける忍の対応は酷のようだが、親切心からくるものだから仕方ない。人とアリエルの寿命の違い、戦争の歴史、規模が広がってきて、いよいよ物語が佳境に入ってきた。アリエル、忍達はどうなるのか気になる。ブログにてhttps://wing31.hatenadiary.jp/entry/2023/05/19/2054512023/05/19
真白優樹
9
自動車免許を取得したり初めての労働をしたりとアリエルが更に現代に馴染む中、耳神様の痕跡を追い広島へ向かう今巻。―――天国なんてありはしない、人の業がある限り。 耳神様を知る老人の悪徳の懺悔、戦争遺跡の先、名もなき島に隠されていた人の業。最終章開始となる中でこの世界が天国ではないと言う事をこれでもかと示していく巻であり、更に悪徳が煮詰まり重さを増していく巻である。果たして正体も分からぬナシエルとは何者なのか。アリエルだけが気付いた、隠されていたエルフ文字は何を示していたのか。 次巻も勿論楽しみである。2023/05/18
彼方
8
自動車の運転の習得にパートとして職を持ち、緩やかに現代社会への融和を深めるアリエル。そんな中、新たな耳神様伝説の情報で忍たちは広島・大久野島へと降り立つ。そこでアリエルが目の当たりにするヒトの闇とは…第6巻。終盤まではお祭りや融通のきかない夏休みの休暇申請、由奈のあの姿再び…とエンタメな部分も和みましたが、やはり常に現実を突きつけることに躊躇のない男・中田忍。過去に存在したと思われる同族の軌跡と現実…アリエルのバックボーンが判明したことで、その視点から語られる感情表現もまた深くなっていてよりぐっとくる…。2023/05/20
