内容説明
明治13年、福岡藩出身の内務省書記官・月形潔は、北海道に監獄を作るために横浜を発った。
明治維新以降、新政府の本流となることができなかった福岡藩出身者には、瑣末な仕事ばかりが与えられていた。
洗蔵さんが、いまのわたしを見たら、どう思われるだろうか――
船上の潔の頭に浮かぶのは、尊攘派志士として命を燃やした従兄弟・月形洗蔵の顔だった。
激動の時代、二人の男の矜持が、時代を越えて交差する。
葉室麟が遺した、魂を揺さぶる歴史長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coldsurgeon
5
幕末動乱期を薩長の志士たちの活躍で描くのではなく、時代に翻弄されたかのような福岡藩の志士の苦悩を描くことにより、日の目をみなかったかもしれない人物を際立たせている。月形潔という幕末から明治中期に生きた一人の官吏が、思い悩むのは、遺されれ生かされていくことの辛さを伝えたいのだろうか。正義を貫こうとすれば、それを遮る者は現れ、取り除いても、逆に遮られても、恨みは生じる。恨みを報いあって、最後に生き残った者がすなわち歴史上の正義なのかもしれない。2023/04/07
水さん
2
政争に敗れれば罪人となり、かつての罪人が為政者となった維新の時代は、志の強さが生きる力ですね2023/08/05
こけこ
1
幕末、維新の頃の薩摩、長州以外の話に興味を持った。激動の時代の憂国の志士の話。歴史は勝者の都合のいいように書き換えられてしまう。本当の正義って何だろう?2023/11/16
きさらぎ
0
全体のメインは月形潔だが、幕末を舞台に、尊攘派志士の従兄弟、月形洗蔵を書いた月の章と、明治政府の役人として北海道で監獄建設に尽力する潔を書く神の章の二部構成を取る。 興味深く読めはするんだけど、これがこの作品の完成形なのかなぁ、という疑問はあるなぁ。神の章を書くための月の章なのだろうけど、それだけに「前号までのあらすじ」というか、前置きを延々読んでる感じになるし、神の章は神の章で潔の思考がすごく言葉に頼って理屈っぽくて、いい話なんだけど何となく窮屈で小説読んだ感興を削ぐ。ちょっと惜しい印象が残った。2023/09/16