内容説明
住宅地の奥でひっそりと営業している、おひとりさま専用カフェ「喫茶ドードー」。この喫茶店には、がんばっている毎日からちょっとばかり逃げ出したくなったお客さんが、ふらりと訪れる。SNSで発信される〈ていねいな暮らし〉に振り回されたり、仕事をひとりで抱え込み体調を崩したり……。目まぐるしく変わる世の中で疲れた体と強ばった心を、店主そろりの美味しい料理が優しくほぐします。今宵も「あなたの悩みに効くメニュー」をご用意してお待ちしております。心がくつろぐ連作短編集、開店。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
389
人生(大げさかな)、仕事、私生活に疲れた時、こんな喫茶店あれば、過去にどれだけ救われたかなと考えてしまう。ただ、これだけの料理では、お腹は満たされないと思ってしまう。そろりさん、せめてもう一品、できればボリューミーな料理がほしいよ。とりあえず、生きるヒントをいただいた物語でありました。この物語は語り手がいるのだけど、物語の語り手は誰だったのか気になって読んでいたら、思わずアンタだったのかいと本にツッコミいれてしまった。。魂が宿ってたのね。BGMには坂本龍一の『Energy Flow』がしっくりしそう。2022/11/24
やすらぎ🍀
352
悩みが膨らんでいく。そんなときに見つめ直し、自身を労る気持ちになれる、喫茶ドードーへ。みんな上手くいっている訳じゃないのに憧れたりして取り残されて。幸せってなに。鞄に本を詰め込んでも張り詰めて、隙間だらけだと寂しくなって。人の気持ちってざわめく中でふわふわと進んでいくのかな。優しさの周りには穏やかな時間が刻まれるけど、そろりさんにもきっと色々あって、私と同じようにふと立ち止まったりたまに泣いたりしながら、笑っていられる時間を少しずつ増やしていったのかな。その方が人生が程よく華やかに見えるようになるのかな。2023/03/05
さてさて
342
『いらっしゃいませ。ようこそ喫茶ドードーへ』 店主の そろりにそんな言葉で迎え入れられる五人の主人公たち。この作品ではそんな主人公たちが『喫茶ドードー』で提供される飲み物、食べ物に”起点”を見つけていく物語が描かれていました。『おひとりさま専用カフェ』、『喫茶ドードー』を二度訪れるという点に標野凪さんの個性を感じるこの作品。その一方で王道の”起点もの”の物語が描かれていくこの作品。何かと行き詰まりを感じる世の中だからこそ、こんな『喫茶店』に是非行ってみたい!そんな風に感じるどこかまったりとした作品でした。2024/03/17
Karl Heintz Schneider
268
「ひとりなんですが。」「はい、うちはおひとりさま専用カフェです。」ここは、友達と来ておしゃべりする店ではない。ひとりで来て、ゆったり過ごす場所。それが「おひとりさま専用カフェ・喫茶ドードー」なのでカウンター4席しかなくてテーブルは置かれていない。そんな、ちょっと変わったお店。日常から逃げ出したくなって、ふらっとこの店にたどり着いた人たちを店主のそろりさんが、ていねいに淹れたコーヒーとおいしい料理でもてなす。ちなみに「ドードー」とは不思議の国のアリスに出てくる、かつて実在したという幻の鳥だそうだ。2022/09/07
ちいこ
215
初めての作家さん。私は短いお話の中で人称が変わるのが苦手ということが改めてわかりました。おひとりさま専用喫茶店が近くにあるといいなぁってホントに思います。2022/08/10