絶対音楽の美学と分裂する〈ドイツ〉 - 十九世紀

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絶対音楽の美学と分裂する〈ドイツ〉 - 十九世紀

  • 著者名:吉田寛
  • 価格 ¥2,860(本体¥2,600)
  • 青弓社(2022/03発売)
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  • ISBN:9784787273680

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内容説明

19世紀ドイツは、ついに自他ともに認める〈音楽の国〉へと上り詰めたが、国家統一をめぐる覇権争いは〈ドイツ音楽〉の理念をも引き裂くことになった。「絶対音楽」をめぐる不協和音から近代ドイツのナショナル・アイデンティティが孕む捻れを照射する。第37回「サントリー学芸賞」受賞。

目次

凡例

巻頭言 シリーズ「〈音楽の国ドイツ〉の系譜学」刊行にあたって

第1章 国民主義的音楽史の誕生――トリーストと十八世紀ドイツ音楽史
 1 ヨーロッパにおける音楽史叙述の歴史
 2 国民主義的音楽史叙述の成立
 3 「考察」の歴史的背景――ドイツの南北分裂
 4 『一般音楽時報』と教養市民層
 5 十八世紀ドイツ音楽史とその三つの時期――「考察」詳解

第2章 〈フランス〉の変貌
 1 「ドイツ人」対「新ラテン系諸民族」――フィヒテ『ドイツ国民に告ぐ』
 2 形而上学と「ドイツ的なもの」――シェリングの学問論
 3 「不倶戴天の敵」としてのドイツとフランス――アルントの愛国歌
 4 フランスから見た〈ドイツ〉――スタール夫人の『ドイツ論』
 5 ヨーロッパ音楽におけるフランスの凋落――イタリアとドイツの二大国時代の幕開け

第3章 進歩主義的音楽史観のなかの〈ドイツ〉
 1 「ドイツ的」かつ「近代的」なものとしての和声
 2 音楽美学の転回点としての一八〇〇年――ヘルダーの器楽擁護論 
 3 進歩主義的音楽史の成立――フォルケルの『普遍音楽史』
 4 ロマン主義的な器楽の美学の登場――ヴァッケンローダーとティーク
 5 「近代ヨーロッパ」を代表=表象する芸術としてのドイツ器楽
 6 「進み続ける時代精神」としての音楽――E・T・A・ホフマンの音楽批評
 7 ヨーロッパ音楽史の頂点としてのベートーヴェン――ヴェントの音楽史叙述

第4章 「ベートーヴェン・パラダイム」――ベートーヴェンと「ドイツ的なもの」
 1 ドイツの「国民文化」としてのベートーヴェンの交響曲
 2 「抑圧者」としてのベートーヴェン
 3 「ベートーヴェン以後」と歴史の空白――音楽史の終焉?
 4 「ベートーヴェン―ロッシーニ論争」の展開

第5章 絶対音楽の美学と〈ドイツ〉の分裂――音楽美学に見る南北ドイツの文化闘争 
 1 「絶対音楽」の美学はどこまで「ドイツ的」なのか?
 2 ハンスリックの音楽美学に見る〈ドイツ〉と〈イタリア〉
 3 ハンスリックにおける「ベートーヴェン以後」の問題
 4 「絶対音楽の救世主」としてのブラームス
 5 ヴァーグナー派によるハンスリック批判――形式主義・ユダヤ性・イタリア性
 6 ブレンデルの音楽史叙述――「絶対音楽」の時代から「総合芸術」の時代へ
 7 絶対音楽の美学とオーストリアのナショナル・アイデンティティ

参考文献一覧

第三巻あとがき

索引

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

直井

0
とってもボリューミーで読むのに時間がかかってしまいましたが…充実した内容だったと思います。日本において「絶対音楽」といえばドイツ的なイメージを表象するキーワードの一つだけど、最初にこの言葉を使ったのはヴァーグナーで、しかもロッシーニの音楽を否定的に言うために使ったというのが、知らなくて、印象的でした。2015/11/08

吉田恭

0
19世紀になると評論資料もかなり残っており、同じ音楽作品群の歴史的連なりを指して異なる物語を紡ぐ複数の論者の思惑や相互作用も見易い感じだ。2019/02/19

ヨハネス・フェーリクス

0
ドイツ的な音楽といえば「重厚」「悲劇的」「壮大」といった表現が浮かぶ。そんな方も多いかもしれません。本書ではこのドイツ音楽のイメージが、長い時間をかけてつくられていったものであることが示されます。膨大な資料をもとにして書かれた本書は、クラシック音楽に携わる人、具体的には趣味でクラシック音楽を聴くのが好きな人、オケなどで楽器を演奏している人にとっても大変興味深いでしょう。ベートーヴェンの神話化は今日に至るまで続いているものであって、「ドイツ的」イメージの構築に大きなやくわりを果たしていると言えましょう。2022/03/06

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