内容説明
売れないもの書きの人見は、極貧生活を送っていたのだが、日がな彼独特の理想郷を夢想していた。ある日、学生時代の同窓生、自分とうり二つの億万長者が死んだことを聞き、恐ろしい企みを思いつく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ムッネニーク
151
11冊目『パノラマ島綺譚 江戸川乱歩ベストセレクション⑥』(江戸川乱歩 著、2009年5月、KADOKAWA) 1926〜1927年にかけて連載されていた表題作の他、1934年に発表された中編『石榴』も収録。 どちらも乱歩らしい耽美でグロテスク、そして奇天烈な作品である。 「そして、丁度その時、まるで申合せでもした様に、打上げられた花火の、巨大な金色の花弁は、クッキリと黒天鵞絨の空を区切って、下界の花園や、泉や、そこにもつれ合う二つの肉塊を、ふりそそぐ金粉の中にとじこめて行くのでした」2023/03/09
nobby
144
ようやく手に取った念願の表題作。もう“パノラマ”とか“奇譚”など目にするだけで期待高まるばかり。序盤から死人が甦るなんて展開に惹き込まれ、壮観で耽美なユートピアに魅せられているうちに、いつのまにか妖艶そして変態な世界に酔い惑わされている…そして最後には明智ならぬ北見小五郎が探偵役で登場と、まさに全編にわたり乱歩を味わう傑作!裸女多勢によるエロティック演出は過剰過ぎるけれど(笑)無尽蔵の富の力で作り上げた理想郷は是非とも目にしてみたいが、一方で取るにも足らぬ望みという千代子への恋だけ叶えられないのが切ない…2018/10/19
*maru*
56
最近第5弾まで読了した娘が「めっちゃ怖い、気持ち悪い、乱歩やばい」と言いながら、何度も何度も読み返していることをまずはご報告。さすが親子。さて、母はベストセレクション第6弾。夢想や執念も、ここまでくるともはや芸術の域。代表作のひとつ、壮大で幻想的な『パノラマ島綺譚』と、巧妙かつ大胆不敵な『石榴』。同じタイプのトリックを用いた作品なのに、なぜこれほど読み心地が違うのか。乱歩やばい。美しく、グロテスクな物語を心から堪能。登録できなかったけど、田島さんのカバーイラストもたまらなく好きだ。2019/12/04
美羽と花雲のハナシ
47
理想郷。微かな痛みを内包した甘美な誘惑が胸をくすぐる。乱歩の想像した理想郷とは一体なんだろう。わくわくした衝動を押さえ付け読み始めたが、そこには想像以上の世界が待っていた。確かに理想郷である。だが、これは欺瞞とエゴと歪みで創造された嘘の世界。パノラマで魅せられる人工的な幻影でしかない。けれど、この膨大で驚異的な想像力と描写力には驚かされる。脳の処理速度が追い付けない程の圧倒的な情報量が襲ってくる。理想郷と地獄は紙一重である。美しく儚く艶やかな打ち上げ花火でラストを飾り、パノラマ島を永遠の理想郷に仕立てた。2012/10/23
そら
46
そうそう、江戸川乱歩ってこんな感じだったな〰。懐かしくて、やっぱり今読んでもとっても面白かった!妖艶、狂人、酔狂、、、幻想的でもって大衆的。「パノラマ島奇譚」殺人シーンがエロい(笑)。裸婦たちの乗り物!?(苦笑)「石榴」ゆっくりと推理しながら読めるし、どんでん返しもあるし、余韻も良かった!解説で知ったけど、横溝正史は江戸川乱歩の担当編集者だったって⁉2019/06/26