内容説明
ベストセラー!第152回直木賞受賞作!
僕はこの世界に左足から登場した――。
圷歩は、父の海外赴任先であるイランの病院で生を受けた。その後、父母、そして問題児の姉とともに、イラン革命のために帰国を余儀なくされた歩は、大阪での新生活を始める。幼稚園、小学校で周囲にすぐに溶け込めた歩と違って姉は「ご神木」と呼ばれ、孤立を深めていった。
そんな折り、父の新たな赴任先がエジプトに決まる。メイド付きの豪華なマンション住まい。初めてのピラミッド。日本人学校に通うことになった歩は、ある日、ヤコブというエジプト人の少年と出会うことになる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
360
『世界に対して示す反応が、僕の場合「恐怖」であるのに対し、姉は「怒り」であるように思う』と姉弟の違いを感じながら小学生の今を生きる歩の物語。そこには、テヘラン、大阪、そしてカイロと、生活の場をダイナミックに移動させていく圷家の日常が描かれていました。テヘランで生まれた主人公の歩が十歳を迎えるまでが描かれたこの作品。それぞれの土地の描写の中にその場所に生きる人々の生活の息吹を感じるこの作品。この先に続く大人への階段を着実に上がっていく歩のそれからと、家族のそれからが楽しみにもなるインパクトのある上巻でした。2023/02/04
つぼ
125
主人公の感覚が自分に合っていた。先が楽しみ。中へ。2017/11/19
TAKA
120
イランで産まれ少年ながら孤高の人の赴きを漂わせる圷歩。一方「ご神木」と呼ばれれマイノリティに徹する姉。この姉は強烈や。母親も相当の変わり者でもあるなか、よう道外れんと育ったなあと感心した。そうこうしてこの一家はカイロへと移動。ヤコブというエジプト少年に出会う「サラバ!」は2人だけの意志疎通の合言葉となる。気配を消す特技が歩少年の穏便に暮らす術に納得。この本は面白すぎるんですけど。矢田のおばちゃんもさすがのキャラやな。日本に帰ってこの一家はどうなる。中巻へ2021/06/02
nuit@積読消化中
119
上巻読了。ゆったりと流れる語り手の幼少期。とにかく全ての描写が素晴らしく、毎度ながらに著者の筆力には驚かされる。語り手の姉のどうしようもない部分は自分の姉と重なり読んでいてヒヤヒヤした。彼女がこれからどのような大人になるのか楽しみだ。因みに私の姉は40代後半に差し掛かるものの、未だに変わらず手を焼く存在のまま成長している(苦笑)。上巻後半のエジプシャンの少年と語り手の熱い友情には爽快感が感じられ、タイトルの「サラバ!」に大きな意味があることが分かった。中巻へ進みます!2018/01/17
kyokyokyo3201
117
文庫になり手に取った。イラン、日本、エジプトと居を移す生活の中で、強烈な個性を持つ家族らに囲まれて育つ歩。無邪気であっていい年頃に諦観を身につけてしまった彼が少し寂しい。新興宗教の姿もちらつく。中巻へ。2017/10/27